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2012.10.31
書籍・ビデオ案内
 

部落解放研究195号(2012.07)

国勢調査を活用した部落問題調査・兵庫県

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もくじ

特 集

国勢調査小地域集計から見る姫路市T地区の変化と現状→ 全文PDF

-要約-
 本特集は、兵庫県の被差別部落3地区を取り上げ、1990年代から現在にかけて生じた変化と現状について、国勢調査のデータを用いて統計的に明らかにすることを目的としている。本稿では、古くから日本における皮革産業の中心地であった姫路市のT地区を取り上げ、人口と世帯、学歴構成、就業状況などの変化と現状について明らかにしていく。

妻木進吾
国勢調査小地域集計から見る丹波市N地区の変化と現状→ 全文PDF

-要約-
 国勢調査の小地域統計(人口・世帯・学歴・労働力状態等)を用いて、兵庫県丹波市N地区の特徴把握を試みた。1995~2010年までの動向を検討した結果、急激な人口減少に歯止めがかかっていること、世帯の小規模化が進んでいること、大学・大学院卒業者の男女差、丹波市全体よりも高い労働力率、低い失業率などを確認することができた。

堤圭史郎
国勢調査小地域集計から見る神戸市B地区の変化と現状 → 全文PDF

-要約-
 本稿は、国勢調査小地域集計をもとに、B地区の特徴を、地区の所在する長田区全体と比較して描いた。結果、世帯の小規模化、単独化が進行しているほか、年齢構成においては少子高齢化が進む長田区全体とほとんど違いが見られないにもかかわらず、B地区においては低学歴層が厚く、「ブルーカラー層」も厚いといった格差の実態が明らかとなった。

内田龍史
論 文
IEAの「市民性教育国際調査(ICCS 2009)」の概要と結果について→ 全文PDF

-要約-
 2009年にIEA(教育達成度評価国際学会)によって実施された市民性教育国際調査(ICCS 2009)の概要を報告し、近年、人権教育研究においても注目されている市民性教育が、国際的な文脈でどのように捉えられ、何が重視されているのかを紹介し、日本における人権教育にとっての活用可能性を検討する。

野崎志帆
大阪府民にとっての同和問題
「人権に関する府民意識調査」2005年から2010年へ→ 全文PDF
(編集部から:『部落解放研究』195号の発行後、ミスが判明したため、本論文「全文PDF」は、実際に掲載された論文そのものではなく、必要な訂正処理をおこなった後の「最終訂正版」であることをお断りしたい。)

-要約-
 本稿では、2010年に大阪府が実施した「人権問題に関する府民意識調査」結果のなかから、同和問題に関するデータに焦点をあて、大阪府が2000年、2005年に実施した同様の意識調査のデータと比較検討した。分析の結果、2000年から2010年の10年間で、大阪府民の部落差別
意識が改善したとは言えないこと、就職差別や結婚差別は、「近い将来、なくすことは難しい」という悲観的な現状認識が増加していること、さらに、同和問題を積極的に解決しようという意識も停滞している、あるいは、後退していることなどが明らかになった。

神原文子

人権CSR指標の活用に関する一考察
部落解放・人権研究所「人権CSRガイドライン」と韓国国家人権委員会「人権経営自己診断ツール」の比較を通じて→ 全文PDF

-要約-
 近年のCSR指標の開発は目覚ましいものがある。それらの設計は、法的規制に準じた「リーガリズム」に立脚するか、企業による自発的取り組みに期待する「ボランタリズム」に軸足を置くかによって、大きく異なりうる。本稿は、当研究所「人権CSRガイドライン」と韓国国家人権委員会「人権経営自己診断ツール」の検討を通じて、それぞれの意義と問題点を指摘するものである。

李嘉永
報 告

子どもたちの学力水準を下支えしている学校の特徴に関する調査研究→ 全文PDF

-要約-
 私たちが調査研究を進めてきた「効果のある学校」研究に関連して、「子どもたちの学力水準を下支えしている学校の特徴に関する調査研究」の成果を最近とりまとめた。その結果、「学校の成果」の土台あるいは前提として、「学校を支える地域」や「学校をサポートする行政(市教委や自治体)」の重要性が改めて確認された。そういう意味では、「学校(だけ)の力」を過大評価してはいけないと言える。一方で、他国に比べて日本の学校・教職員が粒ぞろいであるということも改めて指摘しておく必要があることがわかった。

志水宏吉

NPO田川ふれ愛義塾の軌跡と現状
「遊び・非行型」不登校生や社会で苦しみ悩む青少年によりそって

-要約-
  NPO法人としては全国で初めて更生保護施設として認可された、田川ふれ愛義塾の設立の経緯、その活動の現状と課題についての関係者からの報告である。理事長自身の経験や思い、学校関係者らの周囲の関わり等によって、ふれ愛義塾の活動は支えられている。「よい学校経験」「よい大人」との出会い直し、「社会人」としての育成を心がけているという義塾の取り組みからは、日本の学校教育や更生保護施設のあり方が、問われていると言えよう。

中野直毅・工藤良

非行型青少年の居場所を考える
青少年自立サポート団体「富田ふれ愛義塾」(大阪府高槻市)の活動報告から→ 全文PDF

-要約-
非行型の青少年の「居場所」的な活動を展開している、高槻富田ふれ愛義塾の設立の経緯、その活動の現状と課題についての代表者による報告である。代表自身の生い立ち、これまでに出会ってきた子どもたちのこと、ふれ愛義塾の具体的な活動の中身と課題等が報告されている。そのなかで、「子ども目線」でこうした子どもたちに寄り添うことの大切さ、こうした子どもたちを地域で支えていくことの重要性が指摘されている。

畠山慎二
短 信
教育活動の「見える化」の試み
「伯太高校レーダーチャート」(HERC)の開発と実践→ 全文PDF

-要約-
 2011年度、大阪府立伯はか太た 高等学校は、「伯太高校レーダーチャート」(Hakata Educational Radar Chart、略称:HERC、ハーク)を開発し、教育実践に活用し始めた。新しい教育ツールの開発により、教育の本質に迫りつつ、「全教育活動を通じての人権教育」を具体化せんとする伯太高校の教育思想を前校長が代弁する。

脇田孝豪
編集後記

 特集「国勢調査小地域集計を活用した部落問題調査・兵庫県」で取り上げた姫路市T地区は、歴史的にも皮革産業で有名な部落であり、丹波市N 地区は、農村部に位置するが立地条件と才覚を活かした商売が盛んな部落であり、神戸市B 地区は2,500世帯をこす典型的な都市部落のひとつである。一口に部落といっても、今回の調査結果を見ても、その多様性は明確である。同時に、10年(1995年~2005年)の変化の共通点も明確で、ぜひ一読を願いたいし、全国の活用可能な部落での調査に活用願いたいと考えている。ただし、兵庫の場合もそうであったが、外国籍データが公表されていないため、その分析ができないことが悔やまれる。
  神原論文、志水報告、中野・工藤報告、畠山報告は、それぞれテーマは違うが、大阪府民の部落問題意識の後退、低学力、非行・遊び型不登校生等といった今日的課題の現状と克服の方向・実践を明示している。
  野崎論文は、学力調査でも有名なIEA が「市民性教育国際調査」を2009年に38カ国の協力を得て実施したが、その調査結果の特徴と人権教育との関連性を追究したものである。
  李論文は、日韓で状況の違いを考慮しながらも共有できる「人権CSR ガイドライン」づくりに向け研究が始まっている現在、貴重な内容と言える。
  次号(11月刊行予定)の特集は、「全国の部落青年の雇用・生活実態調査結果」を予定している。 (N.S.)

執筆者一覧

妻木進吾(つまき・しんご)   目白大学講師
堤圭史郎(つつみ・けいしろう)   福岡県立大学講師
内田龍史(うちだ・りゅうし)   尚絅学院大学講師
野崎志帆(のざき・しほ)   甲南女子大学教員
神原文子(かんばら・ふみこ)   神戸学院大学教員
李嘉永(り・かよん)   大阪歯科大学講師
志水宏吉(しみず・こうきち)   大阪大学教授
中野直毅(なかの・なおき)   元田川ふれ愛義塾事務局
工藤良(くどう・りょう)   NPO 法人TFG(田川ふれ愛義塾)理事長
畠山慎二(はたけやま・しんじ)   青少年自立サポート団体「富田ふれ愛義塾」代表
脇田孝豪(わきた・たかひで)   大阪府立伯太高等学校前校長