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2015.04.16
書籍・ビデオ案内
 

部落解放研究202号(2015.03)

第20回全国部落史研究大会~シンポジウム「被差別部落の多様性―全国部落史研究会20年」

年間定期購読(2014年度~ 2冊/4,000円+税)ご希望の方は、「お名前」「ご所属」「送付先」、「何号から」「何セット」を明記の上、FAX(06-6581-8540)まで
もくじ

 


特集

第二〇回全国部落史研究大会 記念講演
京都天部村からの報告――ふるさと“あまへ”の街おこし

辻ミチ子

第二〇回全国部落史研究大会 シンポジウム①
南奥の近世被差別民の多様性と関係性
――「穢多」・「癩人」・「非人」から見る

-要約-
東北地方の近世被差別民研究も、個別研究の蓄積により、基礎的事実が詳細に判明し、時期的変化についても解明しつつある。本稿は、東北地方の中でも「穢多」による「癩人」支配、あるいは「非人」支配が確認される南奥―仙台藩、三春藩、棚倉地域、白河地域を中心に取り上げ、「穢多」、「癩人」、「非人」についての基礎的事実、とりわけ斃牛馬処理を中心に紹介する。また各事例の基礎的事実を整理し、今回対象にした地域における被差別民の関係性について考察する。

横山陽子

第二〇回全国部落史研究大会 シンポジウム①
近世関東の「賤民」集団のあり方・特徴
――長吏・かわた集団を中心に

-要約-
弾左衛門支配領域を中心として「『賤民』の種題とその動向―名称・呼称」、「身分集団、身分組織とそれをめぐる諸関係」、「職業、生業と役割、その仕切り」、「信仰、寺社との関係」の四つに分けて述べる。なお報告時に欠けていた一、二点を追記したが、ご容赦いただきたい。

藤沢靖介

第二〇回全国部落史研究大会 シンポジウム①
紀伊国の近世被差別民

-要約-
紀州藩の牢番頭家のほぼ一五〇年にわたる御用記録である『城下町警察日記』『城下町牢番頭仲間の生活』などの新史料集の刊行によって、紀州藩の近世部落研究は大きな飛躍を遂げた。本報告では、本藩、田辺領、高野山寺領にわけ、先行研究をふまえつつ新史料による知見も加味し、紀伊国の近世被差別民を概観する。(編集部)

藤井寿一

第二〇回全国部落史研究大会 シンポジウム①
近世九州の被差別民
――さまざまな地域、さまざまなありよう

-要約-
近世の九州地域の被差別民のありようも、他の地域と同じく多様である。まず、福岡県域の被差別民が他の六県に比して突出して多いこと。福岡が九州における皮革の生産と流通の中心であったことが大きな要因であろう。さらに九州中北部と南部との違いも大きい。中北部の被差別民が、その呼称・職掌・内部組織等において全国的な状況と軌を一にすることが多いのに対し、南九州では中世の名残を色濃くとどめる被差別民が、近世においてもその呪術性への期待を背にさまざまな分野で活動した。本稿では先行研をもとに、九州各地域における被差別民の相似と相違を概観する。

中村久子

第二〇回全国部落史研究大会 シンポジウム①
討論のまとめ

吉田勉

第二〇回全国部落史研究大会 シンポジウム①
シンポジウムのまとめ

寺木伸明

 第二〇回全国部落史研究大会 シンポジウム②
近世・近代移行期の大和国(奈良県)の被差別民
――「解放令」をめぐって

-要約-
「解放令」研究は上杉聰氏により大きく進展し、多種多様な被差別民がその対象となっていることが明らかになった。しかし、上杉氏
以降も穢多以外の被差別民の「解放令」に研究関心が向けられないという状況が続いたため、本項では穢多を含む多様な被差別民の「解
放令」を比較検討し、何が変わり、何が変わらなかったのかを大和国を事例に概観するとともに、公的な「解放」を私的世界における
「解放」につなぐ必要性を指摘した。

吉田栄治郎

第二〇回全国部落史研究大会 シンポジウム②
広島における「解放令」前後の被差別民をめぐる変化と周辺地域

-要約-
幕末、広島藩の被差別民は幕長戦争に動員された。封建制は揺れ、「解放令」は被差別民が置かれている状況を大きく変化させた。そ
して周辺の人々は「解放令」布告により被差別民に対する差別意識を露顕させた。広島県内の被差別部落は少数点在であり、農村・漁村
が多く、瀬戸内海の島々にも被差別部落が存在している。これらの被差別部落における近世・近代移行期の様子を、「役負担」や日常の
生活・労働・宗教・文化の諸側面から考えてみる。

割石忠典

第二〇回全国部落史研究大会 シンポジウム②
福岡における「賤民廃止令」をめぐる被差別部落の動向と地域社会

-要約-
「賤民廃止令」の布達は、平民の人気は悪く、被差別部落では好意をもって迎えられた。「賤民廃止令」布達以降、博多の市中にほど近
い堀口・辻の被差別部落では、近世期の差別的な状況を覆すかのようなさまざまな行動を行っていき、そのような行動が、町方との軋轢
をうむこととなる。本稿では、「横田日記」を材料に両者の拮抗の様子を明らかにする。

竹森健二郎

第二〇回全国部落史研究大会 シンポジウム②
討論のまとめ

竹森健二郎/ 廣岡浄進

第二〇回全国部落史研究大会 シンポジウム②
シンポジウムのまとめ

本郷浩二
論文

明宗時代に起こった林巨正の乱の性格

一 序論
二 林巨正の乱発生の背景
三 林巨正の乱の経過
(1)参加層の身分的特徴
(2)活動地域の特殊性と活動内容
(3)乱に対する国家の対応策
四 林巨正の乱の性格と影響
五 結論



淑(訳:高正子)

林巨正(イムコクチョン)の乱とは?

髙正
書評

『民族の創出―まつろわぬ人々、隠された多様性』
岡本雅享著(岩波書店、二〇一四年)

窪誠
編集後記

 本号では、二〇一四年五月一〇日・一一日に大阪で開催された、「第二〇回全国部落史研究大会」の各報告をもとに特集を組んだ。研究会設立二〇周年を記念して、大会では記念講演と、「被差別部落の多様性」と題したシンポジウムが近世と近世・近代移行期とにわけて催され、各時代の地域ごとにおける被差別民・被差別部落の多様性が示された。各報告と、それらに対するコメント・質疑応答等の内容を加筆修正したものが本号の特集論文である。ただし、シンポジウム②の、斎藤洋一氏(信州農村開発史研究所)の報告については事情により掲載を見合わせた。
 あわせて、初邦訳となる韓論文と訳者による解説、ならびに書評一本を掲載した。
 なお、今号の本文編集・校正にあたっては、全国部落史研究会事務局にご協力いただいた。この場を借りて改めて御礼申し上げる。
 次号(二〇一五年一〇月発行予定)の特集では、「包摂型社会のあり方調査研究会」の成果について、本年四月より施行される生活困窮者自立支援法の動向もふまえながら報告する予定である。

(編集担当 棚田洋平)

執筆者一覧

辻 ミチ子(つじ・みちこ)元京都文化短期大学教授

横山 陽子(よこやま・ようこ)千葉大学大学院特別研究員

藤沢 靖介(ふじさわ・せいすけ)東日本部落解放研究所

藤井 寿一(ふじい・としかず) (一社)和歌山人権研究所研究員

中村 久子(なかむら・ひさこ)佐賀部落解放研究所事務局長

吉田  勉(よしだ・つとむ)東日本部落解放研究所事務局長

寺木 伸明(てらき・のぶあき)桃山学院大学特任教授

吉田栄治郎(よしだ・えいじろう)(一財)奈良人権部落解放研究所評議員

割石 忠典(わりいし・ただのり)芸備近現代史研究会副会長

竹森健二郎(たけもり・けんじろう)全国部落史研究会事務局長

廣岡 浄進(ひろおか・きよのぶ)大阪観光大学専任講師

本郷 浩二(ほんごう・こうじ) (公財)世界人権問題研究センター客員研究員

韓  嬉淑(はん・ひすく)淑明女子大学校教授

髙 正子(こぉ・ちょんじゃ)神戸大学非常勤講師

窪   誠(くぼ・まこと)大阪産業大学教授