本稿は、心理学的視点から、差別について検討することを目的とする。そのために、まず、差別、偏見、ステレオタイプという、三つの概念についての心理学的定義について整理をおこなった。
そして、心理学において心理学的差別や差別意識に対応する概念である、偏見の構造について、認知成分、感情成分、行動成分からなる三成分モデルについて検討をおこなった。さらに、外界にある無限に近い情報を処理して、人間がうまく生活していくうえで、認知的な節約が不可欠であり、そのためにパターン化された思考、判断、行動をおこなう人間本来の姿に注目した。
こうした認知の節約家としての人間のメカニズムによって、差別が存在する社会においては、「当たり前」「常識」「普通」の行動パターンに無自覚にしたがうことによって、意図的ではないが、被差別者を差別・排除しうるという意図的ではない差別のメカニズムについても検討をおこなった。