現代、不況や不安が社会構造化するなかで、東京都知事石原慎太郎の「三国人」発言に象徴されるような、「日本」社会のショービニスムは強まっている。このなかで、差別や排外主義の研究が重要な課題になっている。
本稿では、鈴木良の「地域支配」論を、馬原鉄男の「差別的労働市場」論との関係で問題にし、八〇年代に「地域支配」論が研究の主流になることによって、「差別」論を欠落した「支配」論が中心になり、それ以前に存在した部落問題研究の新しい可能性を抑圧していったことを指摘した。ただ、辻ミチ子の実証的な京都研究や、それを発展させようとする、小林丈広らの研究を評価し、そこに近代都市部落研究の新しい可能性を見た。
しかし、最近では、「言説」分析が盛行してくるなかで、書誌学的研究を欠いた「言説」分析の危険性もあわせて指摘した。結論では、特に都市部落の実証的な研究の必要性と、「賤民」部落と「スラム」の関係を研究する必要性を強調した。