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部落解放研究 137号掲載
杉本弘幸

戦前期「不良住宅地区」の変容過程(下)
―不良住宅地区・被差別部落・在日朝鮮人―

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 本論文(下)では、まず朝鮮人集住地区の形成過程にふれ、具体的事例として不良住宅地区指定を受け、被差別部落であり、在日朝鮮人の主要な集住地区の一つである楽只地区を分析し、一九二七年から一九三八年の人口動態や職業構成をみてみた。朝鮮人がわずかしか流入しなかった三条地区を比較の対象として分かったことは、双方とも在日朝鮮人の流入とはほぼ無関係に地域の主要産業の崩壊と余剰労働力の都市雑業の転化がみられ、その都市雑業に楽只地区の場合は、流入した在日朝鮮人が従事した割合が高いことであった。もともと賃金格差の少ない都市雑業が占める割合の多い不良住宅地区や朝鮮人集住地区では一般地区と比べて日本人と朝鮮人の賃金格差が少なかった。

 一九三〇年代以降在日朝鮮人の中にも家族を形成しているものが増え、「リーダー層」も立ち現れてくる。その中で彼らは朝鮮人自身の地域にそくした教育や生活問題を解決するために学区会議員として立候補して、地域秩序に参入していこうとする。楽只地区においても、このような動きが顕著にみられたことを指摘した。