「個人の尊厳」と「自立支援」のための福祉への転換をめざす社会福祉基礎構造改革が実行されている。「利用者本位の福祉・医療サービス」を実現していくためには、まず、高齢者介護における抑制問題をはじめとした福祉や医療の現場で起こっている人権侵害を洗い出し、具体に検証されなければならない。福祉や医療分野で起こっている人権侵害は「福祉と医療の貧困」がもたらした結果であり、人権の視点からの検証は「何のための福祉と医療なのか」を問い直す作業でもある。
さらに、個人の尊厳と自立支援のための福祉への転換は、生活そのものを福祉の対象にしようということであり、どんなに困難な状況にあったとしても、その人らしさを取り戻し、胸を張って生きることを支援することである。そのためには、要援護者の社会的背景(生活歴や生活体験)から支援目標とニーズをとらえるアプローチが求められる。ここに福祉や医療と部落問題を始めとした人権課題との接点がある。
今、利用者本位の福祉・医療の実行者としての優れた人権資質が求められているといえる。その意味で、福祉・医療従事者の養成過程における人権の視点からのカリキュラムの見直しと、現任研修における人権教育カリキュラム作りが急がれる。