二〇〇〇年四月に介護保険法が施行され、六月の社会福祉事業法の改正が実に五〇年ぶりの法改正であったこともあって、一連の社会福祉制度の改革は「社会福祉の基礎構造改革」と命名された。その改革を一言でいい表すとしたら「権利の福祉」の出発だろうか。では、それまでの社会福祉はどんなものだったのだろう。
拙稿では、戦前を「治安の福祉」、戦後を「措置の福祉」と呼び、その欠陥を論じることにした。そこに戦前、戦後の政府や自治体の部落問題への関わりを見ることにした。そして、「権利の福祉」がどんな具体性をもって進められるかを検証して見ることにし、そこに、今後の人権救済法制度の検討との関わりを考えてみた。さらに、「社会福祉の基礎構造改革」の戦略的テーマが「地域福祉計画」にあることを論じ、部落解放運動の進路とだぶらせてみた。
最後に、社会福祉の未開のテーマの検討が「社会的援護を要する人びと」への社会福祉のあり方という視点からはじまったことに着目し、部落に現れる新たな矛盾、差別の予兆への警鐘としたいと考えた。