施設コンフリクトと人権啓発
−障害者施設に関わるコンフリクトの全国的な動きを中心に−
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本稿では、全国的な施設コンフリクトの動向、障害者福祉法制における市民と行政の役割、施設コンフリクトの状況、施設コンフリクトを生み出す社会意識、共感的な障害者観の形成要因、啓発活動のあり方、の六点にわたって論じた。
全国的な施設コンフリクトの動向では、毎日新聞調査、国立精神保健研究所調査の二つの調査をもとに、精神障害者施設への反対件数は近年増加していること、反対運動の帰結と反対理由はここ二〇年間ほとんど変化がみられないこと、の二点を明らかにした。
障害者福祉法制における市民と行政の役割では、障害者福祉に関する法律の条文では住民自治か福祉理念かという対立は生ぜず、住民は福祉理念実現への協力しかないことが明らかになった。また、施設コンフリクトが障害者の地域生活支援施策整備推進の妨げになっているとの行政見解のあることも明らかにした。
施設コンフリクトを生み出す社会意識として、偏見、スティグマ、差別の三つを取り上げ検討した。さらに、共感的な障害者観の中心に障害者の人格、個性への理解の深まりがみられることを明らかにした。最後に、障害者の人格、個性にふれるような啓発の重要性とそのあり方について論じた。