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本稿は、大阪府が実施した「同和問題の解決に向けた実態調査」における「住まい」に関する報告をもとに、地区における住まいとまちづくりの展望について考察した。調査の結果から、地区の居住水準は一定向上し、一般地区との間の目に見える格差は縮小しているが、若年中堅所得層の地区外転出の状況や、住宅所有形態における居住水準や定住意向の格差があることを報告した。
そして、地区の住環境を決定する要因である公営住宅の如何によっては、地区が都市スラム化する惧れがあり、コミュニティの弱体化への対応、高齢者へのケアが大きな課題となっていることを示した。
これらの課題に対し、行政の責務を明確にしつつ、「まちづくり」のなかに住宅施策を位置づける必要があること、地域の主体的な関わりのもとに責任を果たすマネージメント能力が重要であることなどを示し、持続可能なまちづくり運動のもとに展開される「居住継承」を実現し、部落の居住文化としての「地域循環居住」の可能性について述べた。