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部落解放研究 143号掲載
園田 寿

デジタル・プライバシーの危機
―住民基本台帳ネットワークシステムの問題性―

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 現在、政府において進められている「電子政府」構想のひとつの基礎にあるのが住民基本台帳ネットワーク・システムである。これは、すべての国民に11桁の固有の番号を強制的に付与し、すべての自治体と国の機関とをコンピュータ・ネットワークで結合するという前代未聞の制度だ。

 そもそも個人情報には、(プライバシーという意味での)私的な価値と(さまざまな政策決定の基礎になるという意味での)公的な価値の両面があるが、情報化の進展は、個人情報のもつこの公的な価値の比重を必然的に高めていく。

 また、電子社会・電子政府の構想が、社会全体が情報化にむかう中での時代の趨勢だとしても、すべての国民に共通に適用される番号制度を前提とした住基ネットの構想には、プライバシー保護の観点から根本的な問題がある。

 国家の基本的な性格は、記録媒体を含めて国家が基礎とする情報の管理および処理方式によっても決定される。住基ネットは、全国民に共通番号を付与し、その数字によって全国民の個人情報を国家的なレベルで管理するシステムだから、確実に将来の日本における民主主義や国家の機能、権力構造に根本的な変化をもたらすに違いない。