Home書籍・ビデオ案内 部落解放研究もくじ > 本文
書籍・ビデオ案内
 
部落解放研究 143号掲載
村上正直

人種差別撤廃条約にいう“descent”という文言の意味について

------------------------------------------------------------------------

 本稿は、人種差別撤廃条約にいう「人種差別」の定義規定(第1条1項)が定める“descent”という差別禁止事由の解釈を行い、それによって、インド社会などでみられるカースト差別や、日本でみられる部落差別に条約が適用されるか否かを検討するものである。解釈にあたっては、「条約法に関するウィーン条約」が定める条約解釈規則に則してこれを行う。

 本稿では、まず、条約解釈に関連する要素として、(1)“descent”の辞書的な意味と学説、(2)条約起草過程、(3)人種差別撤廃委員会の実行及びそれに対する締約国の反応、(4)人権小委員会の実行、があることが指摘される。

 次いで、これらの要素が順次検討され、その後、この文言の意味に関する結論が示される。それによれば、“descent”という文言は、一定の社会的評価が主に出生によって決定される地位を意味し、この文言により、人種差別撤廃条約は、インド社会などにみられるカースト差別および日本にみられる部落差別に適用される。