本稿の目的は、今後策定される「地域福祉計画」がどのようにあるべきかを、部落解放との関連から考察することである。具体的には、大阪府における「地域福祉推進研究会」の取り組みに対する検討を通じて、計画策定をすすめるうえでの課題を明らかにするとともに、今後の方向性を見いだしていくというものである。
その要旨は、まずはじめに、「1.これまでの部落解放と地域福祉の関係について」では、両者が共通に「セツルメント運動」を源流としつつ、その後は「協働」と「分離」を繰り返しながら、ふたたび現在、特別対策としての同和対策事業の終結や市町村地域福祉計画の策定などによって、両者の協働が求められるに至るまでの経緯を概観する。つぎに、「2.地域福祉計画策定の視点と方法」では、「市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画策定指針の在り方について(一人ひとりの地域住民への訴え)」の内容を検討し、そのキーワードとして「住民参加」と「ソーシャル・インクルージョン」を抽出する。
そのうえで、「3.大阪府における『地域福祉推進研究会』の取り組み」では、‡@部落解放と地域福祉が取り扱う問題にはソーシャル・インクルージョンの必要性という点で共通性があるとの基本的認識に立ち、‡A全市町村での部落解放の視点に立った地域福祉計画の策定を目標として、‡B「地域福祉資源としての隣保館のあり方」「部落が所在する小学校区ぐるみでの実践」「社協と連携協働のまちづくり」などの検討課題を明確にしながら、‡Cワークショップ方式などの住民参加の計画策定技法を開発するとともに、今後は本研究会を各地での継続的な協議の場に発展させるというストラテジーについて検討する。
以上をふまえて、「4.部落発の『人権と福祉のまちづくり』を」では、これを地域福祉の観点から、岡村重夫のいう「福祉コミュニティ」の実現をめざす「福祉組織化活動」の一形態であると評価する。そして最後に「5.『社会福祉問題認識の共有化』の必要性について」では、私たち住民一人ひとりの課題として、地域に存在するさまざまな「見えない垣根」を乗り超えて連帯できるかを問いつつ、そのためには協働的な価値規範としての「社会福祉問題認識の共有化」を具現化する必要があるという結論に到達する。