学力に代表される学校知は特殊な知の形態であるにもかかわらず、学校知が強調され肥大化しているのが現代の特徴である。学校知と学校外の生活のなかで学ばれる生活知のアンバランス、いいかえれば生活知の衰退こそが現代の教育危機を招いている。
学力低下論は、個の能力や才能の開発・実現、経済発展などの社会的目標の追求、コミュニティの中の一員としての責任感や連帯感や問題解決力の育成という学校教育の三つの目的のうち、第一と第二の目的に焦点を当てるが、それは学校知と生活知のアンバランスをさらに深刻なものにする。第三の目的を追求することによって、はじめて生活知の価値が認識され、その再生が企てられるとともに、学校知と生活知の連結が模索されていくのである。