舳松村の堺市編入反対運動は、泉野利喜蔵ら水平社同人が中心となってたたかい、たびたび村民大会を開くなど、多数の村民を動員した水平運動として有名である。それだけに早くから注目され、多くの著作でとりあげられている。しかし、今日まで、この編入反対運動に焦点をあて、総合的に考察したものはない。また、史実を誤って伝えている著作が多い。
本稿は、現存する合併(編入)関係史料や当時の新聞などを利用し、堺市編入反対運動をめぐる諸問題を実証的に考察する。
そのうち本号では、編入される前の舳松村の状況や堺市の都市計画のほか、府知事への内申に記されている「合併理由」などについて検討する。