本稿は、今回、村上正直氏によって詳細に論じられた人種差別撤廃委員会による「世系差別」に関する「テーマ別協議」に先立ち、今年の六月二七日に行われた、ヒューライツ大阪国際人権研究会、部落解放・人権研究所国際人権部会、同国際身分制研究会の合同部会における、パトリック・ソーンベリー氏の同名の講演に基づき、最終的に編集部の責任においてまとめたものである。同氏は、英国キール大学教授で国連人種差別撤廃委員会委員であり、国際法とマイノリティの権利、先住民族の人権に関する多くの著書・論文を発表している。
同氏は、各国の事例をもとに、人種差別撤廃条約における「世系」の解釈や、人種差別撤廃条約の実施にあたってしばしば議論となる「アパルトヘイト」、「意図的せざる差別」、「アファーマティブアクション」、「救済措置」、「憎悪発言」と表現の自由、および「反人種主義教育」等について、自らの見解を述べる(編集部)