「人権教育のための国連一〇年」の間、日本では「人権教育・啓発推進法」の施行、基本計画の策定など、人権教育・啓発の実施体制が整った。今後はこうした体制のもとで何を実施していくのか、という教育の内容について議論を深める必要があろう。
現在の日本の教育・啓発は「思いやり」「やさしさ」などの心情主義的価値を強調し、私人間の配慮によって「差別」をなくすことを強調する一方で、市民が自らの権利について学び、社会を問い直す力をつけることを促す、いわばエンパワメントや主体形成の側面が弱い。
また、地方自治体や公教育だけでなく、市民社会自らが、市民にとって必要な人権教育プログラムを創造し、提起する力をつけることも必要である。