人権学習で何を大切にすべきかということに関して、「知識よりもスキル・態度を」あるいは「知識ではなく感性を」といった言い方がしばしば聞かれる。いずれも知識を否定的にとらえている点が共通している。人権に関する断片的事実の教え込みやものの見方の一方的押しつけは当然批判しなければいけないが、だからといって「人権知」そのものを否定するのはまちがいである。
本稿では「人権問題についての知」「人権のとらえ方についての知」「人権の行使に関する知」という三つの側面で「人権知」をとらえる考え方を仮説的に提案し、その形成に向けた具体的事例として、社会教育用学習教材『動詞からひろがる人権学習』の意義について考察している。