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部落解放研究 153号掲載
特集

近世の被差別民と医薬業・再考

斎藤 洋一

 近世の被差別民に医薬業に従事する者が多かったことは、先学によってすでに指摘されている。稲田陽一は、その意味を考察した。これは先駆的な研究として評価される。他方、平井清隆は、滋賀県(近江国)の被差別部落に医者(薬屋)が多かったことを具体的に明らかにした。

  これは医薬業者が多かったことを一県(一国)規模で実証した、唯一の貴重な研究といえる。しかし、他地域に関しては、いくつかの個別的な研究と、断片的な指摘しかない(沖浦和光が、その意味を考察しているが、掲げられている具体的事例は少ない)。

  そこで本稿では最初に、これまでに知ることができた、医薬業に従事した近世の被差別民の事例を具体的に提示する。そのうえで、その意味を考察する。そこでは、被差別民に医薬業者が多かったことは、被差別民のありようと密接に結びついていたことが示される。