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部落解放研究 153号掲載
特集

近世関東における長吏の生業と市商い

岡田 あさ子

 近世期における被差別民(長吏)の生業は、代表的な身分的職能でもある斃牛馬取得や勧進が知られているが、小稿では生業のなかでも特に市商いに注目し、市商いの実態と特質を明らかにすることを目的とするものであり、史料の残存状況などの問題から、対象地域は武蔵国・下野国・下総国など複数地域にまたがり、時期も統一されていないが、これらの複数の事例に共通する点や変化を検討することで関東における市商いの実態を把握することが可能であると考える。

 長吏の市商いは近世を通じて(あるいはそれ以前から)みられる生業であるが、斃牛馬取得権のかたよりや勧進の形骸化といった長吏内部における生業の変化、また貨幣経済の浸透などといった社会背景によって、より重要な生業へと変化していったものである。