本稿は、日本で今日展開されている苅谷剛彦氏を中心とする学力低下論と日本の「ゆとり教育」批判において、論拠とされているアメリカにおける子ども中心主義=進歩主義教育の失敗という見方に対する反論を出発点として、シカゴにおける教育改革を紹介する2回連載の前編である。
本稿では、80年代前半にアメリカの教育レベルの低下を明らかにした『危機に立つ国家』以降、教育の「優秀性」の追求によって不平等を再生産する教育の私事化路線を強めた「伝統主義」と、教育の「公共性」と「共同善」を重視する「進歩主義」とのせめぎ合いのなかで、参加型民主主義の流れをくむシカゴの教育改革が、例外的に成功した事例として位置づけられている。(編集部)
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