野宿者(いわゆるホームレス)に対する差別は差別とは見なされない。
彼らは"同じスタートライン"から出発した競争の落伍者であり、野宿状態へと至ったのは、彼らの無能力や怠惰の結果であると、つまり彼らが抱える困難は彼ら自身に責任がある、「自業自得」であると観念されるからである。
本稿では、こうした「自業自得」観念において前提されている「同じスタートライン」について、1999年に行われた野宿者調査のデータを用いて検討を行った。
結果、野宿者の生育家族において、「母子世帯」「父子世帯」など社会的不平等と結びついた/結びつけられている家族構成の割合が「高い」ことが見出された。
野宿者に「より」析出されやすいのは、当該社会にあって不利な立場に生まれた人々である。
野宿者の析出に社会的不平等の世代間再生産を見出すことができるのである。
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