今号は、大阪の部落史委員会の一〇年間にわたる史料収集活動を経て、部落史研究においては画期的といえる動物考古学史料等の新史料も収めた『大阪の部落史』前近代編の最初の刊行(『大阪の部落史』第一巻〈史料編 考古/古代・中世/近世1〉二〇〇五年一月)を受けて、歴史特集を企画した。
別所論文は、大阪府西ノ辻遺跡で出土した牛馬骨や漁網錘等の考古史料と『水走文書』の河内大江御厨に関わる記述から、当地域における供御人の平安末〜室町初頭の消長を描き出す。森論文は、通史編で触れられる予定の『古事記』「国生み段」と水蛭子・淡島の遺棄の解釈に関わって、「神世七代の段」の先行研究検討から新たな解釈を示す。布引論文は、住吉神社で「穢」を取り除けた「清目之輩」に関する『勘仲記』の記述から、当神社近傍の部落との連続性を示唆する。寺木論文は、大坂四ヶ所のうち悲田院の「非人」集団について、悲田院中間宗旨改帳および類族生死改帳等から、その出身地、役割、宗教的背景を明らかにする。
個別論文では、松阪商業高等学校教員による部落差別(部落差別にもとづく自治会分離運動)事件に対する差別糾弾を、不法行為として訴えた裁判の第一審判決について吟味する丹羽論文、学校を地域に開く試みとして、日本に先んじて進められている英国の拡張学校に関する林嵜/ウィンター論文を収録した。(K)
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