今号は、通例は二月号に掲載している啓発の特集とする変則となった。研究所が二〇〇一〜〇三年にかけて蓄積してきた結婚差別研究プロジェクト(結婚差別研究会)の成果をまとめたものであり、結婚差別をめぐる現状を社会学的に明らかにすることで、部落問題の啓発に寄与しようとするものである。
中村論文は、二〇〇〇〜〇三年に実施した通婚カップルの聞き取り調査から、結婚に際する反対の有無や反対の形と、その克服の仕方の多様な現実を明らかにしている。内田論文は年次統計的データから、通婚率の上昇と同時にみられる結婚差別体験率の上昇の実態を分析している。齋藤論文は、部落外出身女性と部落出身男性のカップルの成立を阻む複合差別に注目し、女性の自立的態度と反差別的態度を手がかりに分析している。
個別論文では、広島三菱重工元徴用工在韓被爆者による訴訟の広島高裁判決の画期的な意義に関して、丹念に検証する在間論文、二〇〇五年四月一日からの個人情報保護法全面施行を受けた労働者の個人情報保護のあり方に関して、解説・検討する竹地論文、原田伴彦・部落史研究奨励金による研究成果として、前近代における癩者のありようについて、忌避意識と身分形態の両面から明らかにする宮前論文の前半を収録した。(K)
|