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2005.12.13
書籍・ビデオ案内
 
前近代における癩者の存在形態について(下)

宮前 千雅子

 前回、古代・中世の癩者の実態を概観した。中世においては宿非人のなかに癩者の集住が見受けられたが、近世においても各地に集住地が確認できる。東北や九州には数カ所の集住地が存在し、癩者たちは皮の取り扱いや牢死者の埋葬場番、勧進、そして牢屋番や牢死者の取り片付け、罪人の捕縛などにかかわっていた。

 その仕事は「役」である場合もあり、「穢多」身分や「非人」身分と密接に関わりあって生活し、厳しい賤視の対象となった。それらの地域では癩者はひとつの被差別の身分として把握された。近世における癩者への厳しい差別意識は、近代以降のハンセン病者隔離政策遂行を可能にした一要素でもあるのではないかと考える。