今国際人権特集は、人権NGOや国連の努力により国際人権保障の枠組みのなかで設置基準が示されてきた国内人権機関、および国境を越えて広がるインターネット上の差別に対する闘いについて、各国の例に学ぶことを意図している。
山崎論文は国内人権機関の役割について、パリ原則に即して整理するとともに、カナダ人権法により一九七八年に設置され、機会均等と非差別を確保すべくあらゆる差別事象を扱うカナダ人権委員会を例として解説する。金論文は、二〇〇一年に韓国国家人権委員会法により設置された同委員会について、国内の人権状況とその改善のための取り組みの経緯、委員会の法的位置づけ、および人権侵害・差別行為に対する委員会の勧告事例から解説・評価する。また、UNESCO『人権研究2004 差別に対する闘い』から、ネット上の人種主義・排外主義と闘う国際協力を進めるための各国の試みを紹介したカリル論文を翻訳転載した。
個別論文では、大阪府の池田市立細河中学校で、地域に開かれた学校づくりを基礎に推進される五日間の職場体験学習を柱としたアントレプレナーシップ教育に関する丹松論文、前近代の癩者のありようについて、近世の東北等ふれられることの少ない地域を中心に概観した原田伴彦・部落史研究奨励金による宮前さんの研究成果の後半を収録した。(K)
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