今近現代史特集はこれまでと少し角度を変えて、部落史とその近接領域に着目した。当研究所研究プロジェクトの問題関心とも重なるが、いわゆる近代都市下層社会を取り上げ、そこでの被差別部落とスラムの重なりや関わりを、首都圏と近畿圏(大阪)をフィールドに追究することを意図したが、スラムに関わる論考が中心となった。
外村論文は、帝都=東京における部落民と在日朝鮮人の関わりについて、居住や労働において互いに近い存在であったのみならず、限定された範囲であったとはいえ解放運動における協力関係も見られたことを明らかにする。阿部論文は、近代都市としての発展と快楽のイメージでのみ語られる横浜において排除されてきた「悲惨な」スラム像について、社会福祉事業史の記述をなぞることによって、私たちの歴史の見方を照らし出す。吉村論文は、大阪におけるスラムクリアランスや「市域編入」等の都市計画事業、景気変動などを通じた現在の「釜ヶ崎」の形成史を辿り、旧名護町との関わりについても明らかにする。
そのほかには、大阪の池田市立伏尾台小学校における学校協議会と学校評価、そこから発展した「わが家の家庭教育診断」の取り組みに関する森山さんの実践報告、日本でもセンセーショナルに報道されたフランスの若者による「暴動」とその後のCPE反対デモについて、日本では詳細を知る機会に乏しい歴史的背景から説き起こして報告する川野さんの短信を収録した。 (K)
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