Home人権関係新聞記事DB>新聞で読む人権>本文
2006.08.31

新聞で読む人権
2006年4月-6月

障害者自立支援法の成立・施行

  • 2月27日 読売新聞 大阪 「就職支援」「工賃上げ」に成功報酬 事業者の「励み」期待 入所者選別の恐れも

  • 3月1日 朝日新聞 大阪 障害者 訪問利用額、6段階に 自立支援法 重度の人、延長可能

  • 3月14日 読売新聞 大阪 メモランダム 障害者の就労 走る女性2人

  • 5月9日 朝日新聞 大阪 障害者自立支援法 負担緩和へ吹田市始動 上限、3年間引き上げ


 1981年国際障害者年が謳ったノーマライゼーション理念にはじまり、2003年の障害者支援費制度と、障害者施策は大きく変化し前進してきました。しかし、2006年4月より施行される「障害者自立支援法」は、さまざまな課題も抱えています。

 第1に、1割負担が導入されたことです。特にこれまでは、所得に応じた「応能負担」であったものが、受け取るサービス量に応じた「応益負担」に なったため、重度の障害者ほど負担金額は大きくなり、必要なサービスを受けられなくなる危惧があります。実際、グループホームからの退所や通所授産施設へ の通いを断念するといった事態も生まれています。

 第2に、支給決定方式の変更の中でサービスの利用制限が起こる危惧があります。従来は、障害者への聞き取りを通じ必要なサービスを確定していまし たが、今後は介護保険制度に準じて、コンピュータ判定と市町村・審査会で障害区分を決めていきます。しかし、コンピュータ判定の項目は高齢者向けの基準 (できる・できないといった身辺自立が主)がベースで、障害者が何に困っているかという視点は弱いです。そのため、例えば知的・精神障害者の場合、低い判 定結果が出るという危惧があります。

 第3に、授産施設等から就職する人を現状の2000人から8000人に2011年までに達成する目標を示し、そのため就職者数が多かったり工賃が目標を超えた場合には、成功報酬を訓練給付に上乗せされます。この結果、入所者の選別を生み出さないかが危惧されています。

 さらに、財源問題も根底には横たわっています。OECD(経済協力開発機構)の「障害者等分野別社会支出比率(対国内総生産費)」をみても、自己負担率が同程度のアメリカが1.36%なのに対し、日本は半分の0.66%と少ない現状があります。