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2006.11.21

新聞で読む人権
2006年7月-9月

学校選択制

  • 3月4日 朝日新聞 大阪 ◆学校選択性 子どもの「社会権」重視して
  • 5月1日 日本経済新聞 大阪 教育 広がる小中学校選択制 公立序列化に懸念
  • 6月4日 毎日新聞 大阪 発言席 学校選択制への四つの危惧

<まとめ>

 教育分野の規制緩和と競争原理の導入の象徴ともいえる「公立学校選択制」が、文科省調査(2005年)によれば、何らかの形で小学校で227自治 体(8.8%)、中学校で161自治体(11.1%)で広がっています。2005年12月、政府の規制改革・民館開放推進会議の答申では、理念としてです が、学校選択制の一律導入と教育バウチャー制度(生徒数によって予算が公立私立関係なく配分される仕組み)の導入が織り込まれました。

 これらについて、人権・同和教育にも深いかかわりを持つ研究者からさまざまな疑問の声が出ています。以下、簡単にその概要を紹介します。

まず現実の弊害として、これらを導入したイギリスでは、学校間の序列構造の先鋭化や過度の受験競争、選択できる「強い個人」の学習権だけの保障、と いった事態を生み出しています。日本でもいち早く学校選択制を導入した東京都品川区で遂に2年連続・入学希望者ゼロの中学校が出てきて、大きな社会問題と なっていますし、教育機会の階層格差を拡大しています。

 次に、それでは学習者の権利保障をどうしていくのかという点ですが、公立学校では、まず狭い学力だけでなく、異質な他者とも力を合わせ、より良い 生活・社会を築いていくための「異文化リテラシー」を身につけることを軽視すべきではないという視点の確立が重要です。そのためにも、地域に根ざした小中 学校づくりが不可欠です。そして学力そのものについては、2極化傾向を押しとどめることが重要であり、そのことは学力低位層だけでなく高位層の向上にも繋 がるとしています。

さらに理論的には、公教育という社会的営為を、モノやカネなどの商品と同一次元で捉えることの是非です。公教育を、商品市場でのユーザーと供給者の関係で捉えると、必然的に教育の本質を見失うと指摘しています。