Home人権関係新聞記事DB>新聞で読む人権>本文
2007.07.11

新聞で読む人権
2007年4月-6月

フリータ(非正社員)の権利

  • 2007年3月25日 朝日新聞 大阪 貧困層共闘せよ フリーター、野宿者、障害者、多重債務者
  • 2007年4月13日 産経新聞 大阪・夕刊 ニートやるね復旧作業に汗 泉佐野のNPO9人派遣
  • 2007年4月30日 朝日新聞 大阪 ネットカフェ難民深刻 全国34店調査26店に「宿泊常連・長期滞在」
  • 2007年5月1日 読売新聞 大阪 働く一人一人守り続け10年 個人加盟労組「管理職ユニオン・関西」
  • 2007年5月19日 朝日新聞 大阪・夕刊 16歳団交「権利」守る 茶髪理由にクビ通告 ユニオンの16人支援

5本の記事を包括した報告です。1.「貧困層共闘せよ・・」は、フリーター、野宿者、障害者、多重債務者、母子家庭の母親、派遣労働者支援団体、生活保護に関わるケースワーカー、などの当事者とその支援組織が、大きな集会を開催した報告、2.「ニートやるね復旧作業に汗・・」は、泉佐野に本拠をおく「おおさか若者支援機構」のボランティア活動の紹介、3.「ネットカフェ難民深刻・・」は、「ネットカフェ」や「漫画喫茶」で寝泊まりするフリーター、とりわけ「日雇い派遣」の実態を10都府県の民間団体と労組で聞きとり調査をした報告、4.「働く一人一人守り続け10年・・」は、結成10年を迎えた管理職ユニオンのメーデーへの参加記事、5.「16歳団交『権利』守る・・」は、ユニオンの支援を受け16歳の少女が解雇撤回を勝ち取った報告です。

「ワーキングプア」、働いても生活できない人びとの存在は、長期不況の中で高止まりの完全失業率と「仕事がない」実態に隠され、深く進行していた日本の労働実態の現実です。景気が回復の兆しを見せ、失業率もやや改善の数値を示し出し、ようやくにして、多くの人びとが貧富の両極に存在している現実を直視しはじめ、格差を実感しているといえます。働けど働けど我が暮らし楽にならず、さりとてじっと手を見るゆとりすらない状況が、ワーキングプアと呼ばれる現実です。

今、1726万人の人びとが非正社員と呼ばれる働き方に就いています(総務省労働力調査2007年1~3月詳細)。また、母子世帯数は約122世帯を超え、その平均世帯年収は212万円です(2003年・厚労省調査)。加えて、働きたくても働けない状態の人、働くことを諦めてしまった人びとが潜在化しています。

そして実数は把握されていませんが、若者を中心とするホームレス(ハウスレス)が、ネット難民と呼ばれる人びとの存在です。

2006年7月にNHKが放送した「ワーキング・プア」の特集は大きな反響を呼び、その放送により生活保護の水準以下で働いている人びとが、400万世帯もいることを多くの人びとは驚きをもって知ったと思われます。

1726万人の非正社員と記しました、その内訳には、「パート」829万人、「アルバイト」337万人、「派遣」121万人、「契約社員と嘱託」292万人、その他148万人となっています。ちなみに、大きく減少といわれる完全失業者は272万人もあり、うち1年以上の失業が続いている人は87万に上ります。

上記の数値の「アルバイト」や「その他」の約500万人に近い人びとの中に、「ネット難民」が含まれていると想像できます。彼らはフリーターであると同時に、主として「日雇い派遣」という働き方を兼ね備えているケースが多く見られます。

携帯電話を拠り所に、前日の夜もしくは早朝の電話・メールを待ち、指定された就業場所に低賃金で働きに行く、たとえその就業場所が遠距離であったとしても交通費は自前であり、「遠いから」と断ると、その後の仕事の連絡も途絶えるという恐怖感を抱える「現代の奴隷制」ともいえるような働き方です。

日当賃金から実費交通費を差し引くと、法定最低賃金さえ割り込むケースも、しばしば存在していることも事実です。

1986年に「労働者派遣法」が制定され、且つ、労働基準法が大幅な規制緩和といえる改正が行われました。さらに、1999年の「労働者派遣法」改正により、政令指定業務(26業務)以外の仕事でも原則自由に派遣できる規制緩和により、偽装請負=違法派遣が急増しました。

事実の裏返しとして、施行6年めを迎える「個別労働紛争解決制度」(2001年10月より)の利用件数は、ますます増加してきています。

昨年1年間のみ(2006年度)の利用実績だけを見ても、「総合労働相談件数:94万6012件」「民事上の個別労働紛争相談件数:18万7387件」「助言・指導申出受付件数:5761件」「あっせん申請受理件数:6924件」(いずれも厚労省発表)となっています。

正社員、非正社員にかかわらず、日本の労働法規のほとんどは、労働者保護権は平等といえます。パートやアルバイトで働く人びとにも、有給休暇の保障や、労働保険への加入義務が課せられていますが、現実には、非正社員の人びとの多くが、違法にも無権利状態に置かれています。