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新聞で読む人権
2007年4月-6月

男性の育休利用「ゼロ」

  • 2007年2月27日 産経新聞 大阪 男性の育休利用「ゼロ」 過去3年、企業の8割で

JIL(独立行政法人労働政策研究・研修機構)が、昨年の6月、7月に実施した「仕事と家庭の両立支援にかかわる調査」の概要報告記事です。

従業員300人以上の企業の全国無作為抽出により、863社の企業、3299人の管理職、6529人の一般社員の回答が得られましたが、見出しのとおり、過去3年間において男性の育児休業制度の利用は、約8割の企業で「ゼロ」であったと報告されています。

育児休業制度が法制化されたのは、今から15年前の1991年のことです。現在は、2005年4月より改正施行されている「育児・介護休業法」が現行法となっています。

この2005年の改正により、正社員でなくても1年以上の雇用実績のある契約社員やパート労働者にも適用が拡大されています。また従来、1年間と法には定められていた育児休業期間が、保育所に入所できない場合などでは、子どもが1歳6ヶ月に達するまでに延長されています。

子どもが3歳に達するまでの労働時間の短縮は、企業の義務ですし、努力義務としては、それを小学校入学までとされてもいます。育児休業を取得したことに対しての不利益取扱いの禁止も法制化されています。残業の制限や夜勤の禁止も明示されています。

ところが、現行法と、今回の調査結果とを対比すると、法と実態との乖離が見えてきます。

企業における両立支援の取組み効果において「大いにあった」と「ある程度あった」の回答の項目別割合を見ると、「女性従業員の勤労意欲を高める(91.7%)」「女性従業員の定着率を高める(90.6%)」「女性従業員の帰属意識を高める(88.2%)」と上位1位から3位までの主語が「女性従業員」となっている点が挙げられます。さらに、効果が「大いにあった」の回答に限ると「女性従業員の定着率を高める」が断然のトップを占めています。

「育児介護休業法」の育児休業の目的は「子の養育」であり、育児休業の申請者は「労働者」となっています。女性の文言は、目的・申請ともに登場しませんし、男女に限らず子をもつ親としての労働者が主役となる制度なのです。しかし、実態としては、育児も育児休業も女性労働者の為であり、役割であるかのように捉えられています。

また、子どもが3歳までの労働時間短縮が、法的義務であることを記しましたが、調査結果では、社内制度が実施されているにもかかわらず、管理職の28.2%が「ない」、一般社員でも22.9%が「ない」と回答しています。「わからない」との回答も加えると、管理職で37.5%、一般社員で43.0%が短時間勤務制度が自社で導入されていることを知らず、認知・周知の問題が浮かび上がってきています。

逆に、調査結果の細部の掘り起こしになるかもしれませんが、企業調査回答の774社(回答企業のうち、過去3年間に配偶者が出産した者がいると回答した企業)のうち3社において、過去3年間で男性の育児休業取得数が「50人以上」と回答されています。むろん、社名は判りませんが、この3社は大いに自慢してほしいCSR実践の最たるものといえます。