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2007.07.11

新聞で読む人権
2007年4月-6月

新たな靴作りの試み

  • 2007年2月28日 日本経済新聞 大阪・夕刊 靴作りの技「見て盗め」 塾開き若手に伝授
  • 2007年5月19日 毎日新聞 大阪 採寸から修理まで一切を請け負い、完結 「におい立つような靴お客さまに」

「西成製靴塾」に関する2本のルポ記事、1つは、塾修了生の独立開業後を追ったもの、もう1つは開塾8年目を迎えた製靴塾そのものを報告した記事です。

「西成製靴塾」は1999年にスタートしました。靴づくりの仕事は、西成の同和地区を代表する明治時代から続く地場産業です。しかし、近年は海外製品の流入や、機械化による大量生産品の増加により、「手づくり」を基本に「分業」「小規模や家内作業」で成り立つ西成の靴産業は、人材不足と後継者不足に陥り、最盛期には約300軒と言われたメーカーも激減し、とりわけ若い職人の姿は珍しいものとなっていました。

そうした中、「西成製靴塾」は、地域の「まちづくり」の取組みから生まれました。元気な高齢者を中心に地域の仕事をグループで引き受ける「生きがい労働事業団」が誕生し、そのメンバーの一人に西成製靴塾塾長の村島靖雄さんもいらっしゃいました。村島さん自身は、現役を引退した身ですが、手づくり靴職人歴は50年を数える大ベテラン。その腕と伝統の技とを伝えようと、小学校の空き教室を利用し、大阪市の生涯学習ルーム事業に位置づき開講されたものです。

宣伝媒体は、インターネットのホームページのみで、且つ「入学金4万円、月謝5万円(現在)」とけっして安価ではないのですが、毎年盛況を極め、職人をめざす若者たちからも注目を集めるとともに、永年培った技術を老後の生活の中軸に据える元気なおとしよりの理想の姿としても全国的に注目を集めています。

2002年3月に同塾を修了した志水さんと佐渡さん、お二人が2003年に立ち上げたオーダーシューズ店「カボシェ(フランス語で「釘」の意)。苦労の連続のなかで開店後3年を迎え、ようやく固定客も定着し、店が軌道に乗りだしたルポタージュとなっています。採寸、木型づくり、製造、納品までに約3ヶ月を要するオーダーメイドの完全手づくり靴の完成プロセスです。

ものづくりに魅せられた若者の姿と、現役時代の匠の技を伝える高齢者の姿。共にけっして平坦な道のりではなかったであろうと想像されますが、多くのひとびとが憧憬を抱くであろう若者と高齢者の姿ともいえます。