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2007年6月19日 朝日新聞 大阪 女性国会議員の率日本12カ国中11位
記事には4つの項目が報道されています。1.2007年版の「男女共同参画白書」が、6月19日に閣議決定されたこと。2.その白書の内容として、女性の国会議員に占める割合や、女性国家公務員をアジア・欧米の12カ国だけで比較すると、国会議員では11位、国家公務員では最下位であったこと。3.女性管理職は10.1%と欧米より極端に低く、アジア諸国と比しても、フィリピン57.8%やシンガポール25.9%から水をあけられていること。4.「女性の地位を示す指標の1つ」である男女の賃金格差では、欧米諸国が80%台を示しているが、ここでも日本は66.8%と格差が大きいこと、が記載されています。
〈まとめ〉では主として、女性議員の課題を取扱いますが、まず賃金・労働について少し触れておきます。
女性管理職の進出割合や男女間賃金格差には、労働形態や労働時間が大きく作用を及ぼします。同時に、育児・育児分担を含む家事分担とも切っても切れない関係があります。
日本の女性の働き方、とりわけ労働力率においては、常にM字型労働と言われてきました。M字型とは、30-34歳の子育て時期にボトムを示す労働力率の分布のことを言います。その反対型として称されるのが、逆U字型と呼ばれるものです。
逆U字型には、典型代表として、英国、フランス、ノルウェーなどが挙げられますが、今や逆U字型が主流となりつつあります。
日本では、出産・子育てで一旦職場を離れると、再就職した女性の多くがパートタイム労働者として働いています。ところが、EU諸国では、1980年代から同一労働・同一賃金の考え方が定着し、1997年の「EUパートタイム労働指令」により、労働時間による差別的取扱いの禁止がEU共通ルールとして確立されたことが大きな影響力となっています。
正社員と同じ扱いをされる短時間労働者は、社会保障や福利厚生面の同等扱いをはじめ、8時間労働者よりも時間に応じてその時間分の賃金が少ないだけです。加えて、パート労働と正規労働との相互乗り入れにより、育児や家事労働が許すならば正規労働に戻ることが可能です。そのため、労働力率のカーブのあり方や、女性管理職割合に差が生じるのは当然のことといえます。
また育児において夫の分担が、ノルウェーやオーストラリアでは4割前後を示していますが、日本では12.5%と目立って低い数値となっています。育児、家事分担による女性の社会進出の遅れも典型的に現れています。
記事の見出しにもなっている女性の国会議員割合は興味深い数字です。12カ国中第11位ですが、全体で見ると、189カ国中、131位に位置しています。
日本の議長や閣僚にも、女性議員が登場するようになってきましたが、ノルウェー、フランス、スウェーデンでは女性閣僚の占める率は40%を超えています。今年5月に発足したフランス新内閣の顔ぶれでは、ほぼ半数に近い閣僚が女性であったことは記憶に新しいところです。
白書内から見てとれる女性議員の増加のための取り組みは興味深いものです。
日本に比して諸外国に女性議員の割合が高く、且つ増加しているのは、基本的にはクォーターシステム(割り当て制度)に依るところが大きいと思われます。
フランスにおいては、1996年6月の憲法改正により、パリテ(男女同数)条項が導入され、議員職と公職への男女の平等なアクセス促進が明記されました(憲法第3条、第4条)。この結果、二院制の上院では、比例代表候補者名簿登載順序が男女交互が義務づけられ、下院においては、「公職における男女平等参画促進法(通称「パリテ法」)により、2回投票制の比例代表では男女同数が義務づけられています。条件未達成の場合は届出が不受理となり、政党として比例区選挙に参加できなくなる仕組みになっています。小選挙区のほうは、候補者の男女差を2%以内にしなければ、政党助成金が減額される罰則が設けられています。
お隣の韓国では、公職選挙法により規定されています。韓国は一院制ですが、全国区と小選挙区があります。全国区比例代表では、候補者名簿の50%以上が女性でなければなりません。また、小選挙区(韓国では「地域区」と呼ばれます)では、努力義務として各政党が30%以上の女性候補を推薦しなければなりません。
フィリピンは二院制ですが、1995年に施行された「The Party List Act」(政党リスト制度)により、社会的マイノリティの議会参加奨励策の一環として、複数の女性団体が政党を結成し、下院選挙に参加しています。加えて政党リスト制度には、女性を含む特定のマイノリティグループに、下院250議席の20%の割り当てることも明記されています。
その他の国においても、各政党ごとの党規約に女性候補者の割り当てが定められており、ノルウェー(50%)、スウェーデン(50%、ただし自由党のみ40%)、ドイツ(男女交互名簿や1/3以上)、オーストラリア(労働党のみだが40%枠)、マレーシア(華人協会党が地方議員女性30%枠)など、多様なクォーターシステムにより女性の政治参加を保障しています。
こうした様々な制度的裏付けにより、諸外国の女性議員の政界進出が後押しされているといえます。
「白書」内において、とりわけ目を引いたのがルワンダに関する箇所です。白書内そのままの引用になりますが、一読願いたい気持ちから転載させていただきます。
「 アフリカで進む女性の政治参画
アフリカのサブ・サハラ地域は、経済的には世界で最も貧しい地域の1つであるが、女性の政治参画という意味では先進的な国も多い。
2003年以降国会議員に占める女性の割合で世界のトップに位置するのは、ルワンダである。ルワンダでは、憲法において、国の「指導的機関の地位のうち少なくとも30%を女性が占めるものとする」と規定した上で、上院26名のうち30%を女性とすると定めている他、下院についても、法律により80名中24名を女性に割り当てた。このため、2003年、クォータ制導入後初めての選挙では、国会議員に占める女性の割合がそれまでの25.7%から48.8%にまで上昇し、それまで長年1位であったスウェーデンを抜いて世界で女性議員割合の最も高い国となった。アフリカ諸国で女性の政治参画が進んでいる背景には、1995年に国連の第4回女性会議(北京会議)が開催され、国際的に意識が高まったことの他に、国内の政治的・社会的な事情がある。
ルワンダでは、1994年に民族間の闘争により、春から初夏に至る100日間に国民の10人に1人、少なくとも80万人が命を失った。残された女性は、世帯主の3分の1を占めるに至り、これまで伝統的に男性が担ってきた職業にも従事することになった。このような状況下で女性の社会進出が進み、新体制への移行に伴う憲法の起草にも女性が携わったこと等の結果、国会議員に占める女性議席を確保するための規定が設けられた。
・・・・」。
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