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9月6日 朝日新聞 大阪 外国人実習 昨年度巡回指導 違反7397件 氷山の一角 事前に調査通告 隠蔽工作が横行
今年4月以降、この欄で取り上げること早くも3度目となる「外国人『研修・技能実習制度』」に関することがらです。4月には、「研修・技能実習制度」で来日したベトナム人女性6人が、人権侵害や残業代未払いを続けるトヨタ自動車の下請けメーカーを相手に、名古屋地裁へ集団提訴した問題を取り上げました。7月には、アメリカ国務省の「2007年・人身売買報告書」において「『外国人研修生』制度に参加する労働者が強制労働状態に置かれている」ことに「捜査に一層の努力を」指摘されている問題を取り上げました。
そして今回はJITCO(財団法人国際研修協力機構)が「アリバイ的」に実施した外国人実習の巡回指導において、違反の発覚が7397件把握されたことを取り上げます。敢えて「アリバイ的」と表記したのには明確な根拠があります。
現在、外国人研修生としての入国者数は約9万人、実習生とを合わせた数は15万人を超えています。JITCOの報告書(「2006年度版JITCO白書」による)においても、2005年度単年度のみの研修生が57,050人(内訳として「団体監理型」に49,480人、「企業単独型」に7,570人)となっており、原則、研修期間と実習期間との合計期間が3年間なので、概数として計15万人超といわれる数値とは符号します。
JITCOは2006年度、受入れ先の6206事業所に対して巡回指導をおこない、うち違反件数が7397件発覚したとのことです。JITCOの巡回指導は、対象事業所には数週間前に事前連絡が入り、調査項目は毎回ほぼ同じで、20分程度で終了するということです。これは巡回指導を受けた事業所の証言ですので事実であろうと思われます。さらに驚くべきことに、事前連絡を受けた事業所は、月額基本給や残業手当、寮費などを数ヶ月に遡り改ざん作業をおこなうと証言しています。東海地方のある衣類加工の経営者の証言として、改ざんした台帳には、月額基本給約12万円、残業代約1万円、寮費・光熱費の天引き2万5千円などと記入した賃金台帳や実習日報をJITCOに見せたと語っています。事実は、基本給5万円、残業手当は時間当たり300円強、改ざんした実習日報には「検品作業」「ファスナーの付け方」等々、実習項目を羅列したそうです。これも実態は、ただひたすらアイロン掛けをさせているだけだそうです。「突っ込んだ質問はなく台帳類もぱっと見た程度。何もばれなかった」と、その経営者は語っています。
さらに実習生には、強制労働の温床ともいえる「事業協同組合」(制度としては「団体監理型」と呼ばれるもの)から通訳が派遣され、実習生に対して模範回答をする練習をおこなったそうです。賃金は現金で受け取っているというのが模範回答だそうですが、現実には賃金の一部のみが現金で残りは会社が口座に預金し、その通帳も会社が保管しているということです。この姿は過去の「女工哀史」(1925年・細井和喜蔵の小説)や、「近江絹糸争議」(1954年・会社による強制貯金や残業代不払い、信書の開封、外出禁止などの撤回を求めた歴史的労働争議)と全く同じ構図が現在日本に実際に繰り広げられているといえます。これすらも、賃金の現金支払いの明細や控えさえ見ればすぐにも事実が判明することですが、それすらJITCOの巡回指導ではなされないと聞きます。「アリバイ的」と断言できる根拠がこれほど存在しているのです。
こんな杜撰な指導であるにもかかわらず、6206事業所指導で7397件の違反が判明したことは驚愕に値するとともに、冷厳な実態の端緒にすぎないともいえます。
JITCO側は、強制立ち入り権がないこと、相手の協力ではじめて指導ができること、また意図的な不正行為を見破ることの難しさなどを語っています。JITCOは、外国人「研修・技能実習制度」の推進母体ゆえに無理からぬことと思えます。
にもかかわらず、経済産業省が今年5月に発表した「外国人研修・技能実習制度に関する研究会・とりまとめ」(依光正哲・埼玉工業大学教授を座長とする12名からなる「外国人研修・実習制度に関する研究会」の最終報告書)では、この制度は「『技能移転による国際貢献の制度』という理念は今後とも維持継続」し、「地道な取組みにより、『草の根の国際貢献』を実現していくべき」と現状肯定を前提とし、不当な低賃金、過酷な労働状態となっている現状の問題点については、セミナー開催やパンフレットの配布、キャンペーンにより対応するという「とりまとめ」となっています。
しかし、米国国務省の人身売買監視・撲滅室長のマイク・ラゴン氏は7月3日に来日し、外務省・法務省・厚生労働省などに、外国人「研修・技能実習制度」の廃止を働きかけました。政府も今年3月の「規制改革・民間開放推進3カ年計画」において、2009年を待たず今年中に研修生の法的保護のあり方の結論を出すよう閣議決定されています。
そして、研修生や実習生当事者や支援組織として、今年6月には「外国人研修生問題ネットワーク」が発足しています。1999年から全国各地でスタートした「移住労働者と連帯する全国フォーラム」の取り組みを端緒に、低賃金、長時間労働、外出禁止、パスポートの取り上げ、不当な保証金等々、まさに「人身売買」といえる実態に対し、
- 外国人研修生・技能実習生の人権と労働権の確立、
- 外国人研修・技能実習制度に関わる政策の提言、
- 外国人研修・技能実習生に対する救援並びに情報提供、
- 外国人研修・技能実習制度の問題点の告発、
- 外国人研修・技能実習制度に関わる研究者の育成と連携、
- その他外国人研修・技能実習制度並びに移住労働者全般の問題を通じてより良い多民族多文化共生社会の確立に寄与する、
を目的に活動を開始しています。
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