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8月25日 日本経済新聞 大阪 「聴く本」一般図書館でも 録音図書作成 解禁へ 視覚障害者に朗報
朗読による録音で読書を楽しめる「録音図書」が、一般の図書館でも作成が可能となるよう文化庁が規制緩和の検討をはじめたことを報じています。視覚障害者にとっては勿論、朗報ですし、加齢等により読書に困難を抱える高齢者の方にとっても実現すれば大いに役立つと思われます。
視覚障害者にとって大きな制約のある読書のツールの主なものは、「点字による複製」「文字の拡大図書」「インターネット等を利用したデジタル音声データ配信」そして、デシタル音声と重なりますが「録音図書」などが挙げられます。
しかしこれまで、これら主なツールにもさまざまな問題点が指摘されてきました。例えば、点字を用いて情報を得ている人の数は、約3万人といわれています。視覚障害者の数は、厚生労働省の発表では約30万人です。「文字の拡大図書」については、ようやく2003年に「拡大教科書」の使用が認められるようになりました。しかし、これも「児童・生徒に限る」と法規定されており、小学校~高校までの教科書に限定されたものになっています。「インターネット配信」については、これまで公開を制限されてきましたが、このほどようやく実現を見たばかりです。
そして「録音図書」は、公共図書館が作成する場合には、著作権者の許諾を求めなければならず、許諾なしでおこなえるのは、「視覚障害者の福祉の増進を目的とする施設」のみで、点字図書館や盲学校の図書館などに限定されていました。
視覚障害者にとっての情報獲得のツールとしては、ますます「録音図書」に比重が移ってきています。しかし、このニーズに大きく制約をかけているのが「著作権法」(1970年法律第48号)です。「著作権法」は、「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利を図り、もって文化の発展に寄与すること」を目的としていますが、著作権者の側のみを法的に保護したものといえます。情報格差の問題や、受け手の権利については欠落している法律ともいえます。一般市民にとって馴染みある条文は、「私的使用のための複製」を認めた条文くらいかもしれません。
「録音図書」を著作権者の許諾を得ずに公共図書館において作成を求める取り組みは、図書館関係者や視覚障害者たちが、長年にわたり要望されてきたことです。2004年には、文芸作品に限り、日本図書館協会と日本文藝協会間で「公共図書館等における音訳資料作成の一括許諾に関する協定書」が取り交わされ前進しましたが、限定されたものにとどまりました。
今年7月の著作権法改正では、これも「視覚障害者情報提供施設」などに限られますが、前述のように録音図書のインターネット配信が、著作権者の許諾なしでおこなえるようになりました。
文化庁の「文化審議会・著作権分科会」において、公共図書館においても著作権者の許諾なしでの作成の論議がスタートしています。財政面や、制作に要す時間、また朗読のスキルとノウハウの課題と、乗り越えるべき問題も山積している事実はありますが、情報格差(視覚障害者にとっては読書する権利ともいえます)を生み出している法の改正が一刻も早く実現することが望まれます。
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