Home人権関係新聞記事DB>新聞で読む人権>本文
2007.12.28

新聞で読む人権
2007年12

部落女性、アイヌ女性、在日朝鮮人女性たちが、複合差別の実態について交流を深めています。

  • 10月22日 北海道新聞 札幌 アイヌ民族、在日朝鮮人ら交流

 2007年10月20日・21日に、札幌市アイヌ文化交流センターにおいて、アイヌ民族、在日朝鮮人、被差別部落の女性が集まり、「第1回マイノリティー女性フォーラム」が開催されました。このフォーラムは、北海道ウタリ協会と反差別国際運動日本委員会が共催したものですが、これは、北海道ウタリ協会、部落解放同盟中央女性対策部、アプロ女性実態調査プロジェクトという女性当事者団体がアンケート調査を実施したことを契機としています。

 この調査が行われた背景は次のようなものです。2003年7月に女性差別撤廃条約に関する日本の履行状況について、条約監視委員会である女性差別撤廃委員会が日本政府報告書を審査しました。国連では、北京女性会議以降、日本国内における差別問題に関する認識が深まり、関心が集まっていました。審査の過程で行われたマイノリティ女性当事者からの訴えに応じて、委員会は、日本政府に対し、「分類ごとの内訳を示すデータを含む包括的な情報、とりわけ教育、雇用、健康状態、受けている暴力に関する情報を提供することを求める」と勧告しました。しかし日本政府はかかる調査を実施する意思はないとしたため、当事者たちが自らの手で調査を実施することとしたのです。

 2004年から2005年にかけて実施されたこの調査では、教育や識字、就労状況、年金、生活保護率などとともに、今回配偶者による暴力(DV)について初めて調査を行い、その結果、差別の実態が明らかになりました。また、この調査を通じて、多くのマイノリティ女性との出会いや信頼関係構築が実現し、さらには各グループ間のネットワーク化が進みました。この調査結果を踏まえて、それぞれの複合差別の実態を克服していくべきことが提言されましたが、その中で、かかるネットワークの強化・拡大を進めることとし、「マイノリティ女性のフォーラムを開催する」としています。今回開催されたマイノリティ女性フォーラムは、この提言を受けたものです。

 第一日目に、開催地である北海道のアイヌ女性から、アイヌ民族の歴史と女性、さらに今回のアンケート調査からみえてくるアイヌ女性に対する複合差別の実態が報告されました。その後、参加者相互の理解を進めるためのワークショップが開催されました。二日目には、今回のフォーラムで感じたことや学んだこと、さらに今後どのような取組を進めることが重要であるかという点について議論し、最後のフォーラムで共有しました。午後には、北海道大学構内にあるアイヌ納骨堂や、アイヌ民族関連の遺跡めぐりが行われました。とりわけアイヌ納骨堂は、大学によるアイヌ民族に対する人類学的な調査のなかで、アイヌ民族の墓が強制的に発掘されたり、動物の標本と同様の状態で陳列されるなど、大学による調査がいかにアイヌ民族の尊厳を踏みにじってきたかという点について学習しました。

 今後もこのマイノリティ女性フォーラムが開催され、それぞれの課題解決のために議論し、さまざまな立場の女性をはじめ、政府や男性たちに対し、複合差別の実態を問うていくことが期待されます。そして彼女たちの声に、社会が耳を傾け、重要な社会的課題として受け止め、解決に向けて真摯に取り組んでいくことが重要です。