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2008.05.22

新聞で読む人権
2008年01

まとまった「部落解放運動への提言」

  • 2007年12月12日 朝日新聞 大阪 「解放同盟規約改正を」 外部委 組織の抜本見直し提言



 2006年5月に発覚した飛鳥会事件以降、部落解放同盟幹部が関与した刑事事件や、同和行政に関わる不祥事が次々と発覚し、大きな社会的批判が巻き起こりました。このような不祥事は、本来部落問題解決に向けた取り組みを進めるべき運動団体構成員が、その理念を忘れ、同和行政を悪用したものといわなければなりません。またこのような事態を引き起こした背景には、組織の構造や運動のあり方に、大きな問題を抱えていたといえるでしょう。

 そこで、部落解放同盟は、15人の識者に依頼して、上田正昭さん(京都大学名誉教授)を座長とした「部落解放運動に対する提言委員会」を設置し、この間の不祥事の背景にある組織・運動のあり方に関する問題点を分析し、今後のあるべき部落解放運動について提言していただくこととしました。

 提言委員会は、2007年3月5日に第1回会合を開催し、以後計7回の全体会合、4回の起草小委員会を開催し、11月28日に「部落解放運動への提言 一連の不祥事の分析と部落解放運動の再生にむけて」をとりまとめ、12月12日に部落解放同盟中央執行委員長である組坂繁之さんに手交しました。

 この提言において、提言委員会は、今般の不祥事とそれに起因する社会的批判を部落解放運動における「戦後最大の危機」と捉え、「こうした危機的状況を直視しながら、部落解放同盟が真に時代の要請に応える新しい運動の展望を切りひらき、人間解放の崇高な理念に基づく活力ある組織として再生するためには何をなすべきか」という観点から、方向性と課題について提言されました。

 まず「(2)一連の不祥事の背景の分析と問題点」では、行政と運動団体幹部の癒着、行政要求一辺倒が招いた行政依存体質、手段(事業)と目的(解放)の本末転倒、内なる敵に対する甘さ、同盟員の意識の落差、独善を生んだ運動論のゆがみ、不正をチェックできなかった組織上の欠陥などが指摘されています。

 このような問題点を踏まえて、「(3)部落解放運動再生への道」として、特措法時代の光と影の厳しい総括と意識改革、運動論の再構築(魅力ある運動の創出、人権のまちづくり運動の推進、市民運動との能動的連携の必要性、新しい文化創造の時代、国際的視点の共有、メディア・インターネット戦略の確立、相互理解と相互変革をめざす糾弾、情報公開と説明責任に耐えうる行政闘争の深化)、組織の強化(自力自闘を基本にした「行動指針」の策定、中央本部の指導性と支部のあり方、内部チェック機能の整備、人材育成の重要性、規約改正の検討)などを提案しています。

 さらに、「(4)真の人権政策の確立を求めて」では、かかる不祥事に便乗した同和行政切り捨ての動きを批判し、部落問題解決のための行政のあり方についても提言しています。人権行政における同和問題の位置付けと内実化、「人権教育・啓発推進法」等の有効な活用、個別の人権課題を踏まえた実施計画の策定、縦割り弊害を排した行政総体の取り組みの促進、官民協働の取り組みへの積極的な参画、「人権侵害救済法」の早期制定を含む人権法制度の確立などを求めています。

 これらの提言を受けて、部落解放同盟は、本年3月に開催した全国大会において、1年間かけて、この提言を受け止め、組織改革に向けた取り組みを進めることとしています。

 提言の全文については「部落解放運動への提言」をご覧下さい。