- 2008/08/23 読売新聞 大阪 セクハラ相談40%増 改正法施行で表面化
1997年に男女雇用機会均等法が改正され、事業主は、女性に対する性的言動や、それに起因する職務上の不利益、さらには就労環境の悪化(これらを総称してセクシュアル・ハラスメントといいます)の防止について配慮する義務を負うこととなりました。法制上の配慮義務が定められたことによって、一定の取り組みが各職場においてすすんだことは事実ですが、しかし配慮義務という性格上、各事業者による対応はまちまちであり、被害を被った方に対する救済も必ずしも実効的ではありませんでした。
そのため、2006年に男女雇用機会均等法が改正され、セクシュアル・ハラスメントの防止についても、「当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」を明示し、また、被害者についても、従前女性労働者に限っていたものを、全ての労働者とし、男性に対するセクシュアル・ハラスメントをも射程におくこととしました。
また、男女雇用機会均等法上、この法律に関連する労働者と事業者間の紛争に関して、労働局長が助言・指導・勧告を行う援助制度が設けられていますが、セクシュアル・ハラスメントもこの援助制度の対象に位置付けられることとなりました。
毎年、セクシュアル・ハラスメントの相談状況やそこから見えてくる被害の実態を把握するために、厚生労働省は、各労働局雇用均等室に寄せられた相談状況をとりまとめています。07年度の総件数は2万9110件でしたが、そのうちセクシュアル・ハラスメント事案は1万5799件を占めたとの事です。上記の記事からは伺えませんが、そのうちの男性労働者による相談は517件に登っています。その要因には、被害者保護対策を上述したように強化したためであるとされていますが、しかし依然として多くの事案が発生しているといわなければなりません。ただし、事業主による相談は4163件に登っており、必ずしも被害の救済に関わる相談とは限らないようです。
とはいえ、依然として増加傾向にあることは、隠れていた被害が明るみになってきたという側面が無いではないにしても、深刻な状況であることには変わりありません。また、相談件数だけでは、これらの事案が適切に処理され、被害者が適切に救済されているかについても窺い知ることはできません。
さらにいえば、性的指向や性的自己認識に基づく嫌がらせもまた、セクシュアル・ハラスメントに該当すると思われますが、このようなケースについて、法制上も、あるいは各事業主による取り組みについても、必ずしも十分に行われていないように思われます。
そのため、セクシュアル・ハラスメントに該当するであろうケースについて、法改正後の規定に見合った指針を示す必要があると思われます。また、性別や性的指向に関わり無く、性的言動による不利益を被ることがないよう、また、もし仮に被った場合には、実効的な救済が図られるよう、より一層取り組みを進める必要があると思われます。
第23回男女雇用機会均等月間について(2008年5月30日厚生労働省発表)
3 男女雇用機会均等法施行状況 ~ 改正法施行1年目の状況 ~
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