- 10月10日 毎日新聞 大阪 記者の目 今も続くアイヌ差別 国は反省せよ 共生目指す先住民族政策を まず貧窮の苦悩聞け
2008年6月6日、衆参両院において、「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」が全会一致で採択されました。これを受けて、政府は、「「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」に関する内閣官房長官談話」を発表し、近代化の過程において、アイヌの人々が差別され、貧窮を余儀なくされてきたことを歴史的事実として、厳粛に受け止めるとしました。
これらの国会決議や官房長官談話は、アイヌ民族に対する厳しい差別が存在しているという事実に立脚しつつ、国際連合において採択された「先住民族の権利に関する国際連合宣言」や、国連人権条約機関からの勧告を受けたものです。その結果、政府として、ようやくアイヌ民族の「先住民族性」を認めたということになります。
これを受けて、政府は「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」を設置し、先住民族の権利に関する国際連合宣言に示される先住民族の権利を参照しつつ、アイヌ民族の人々の権利を実現するための政策立案を進めているところです。
これまで、「北海道旧土人保護法」や「アイヌ文化振興法」などの法制が行われてきましたが、前者はアイヌ民族の独自の文化を否定し、同化政策を進めるものでした。また、後者は、「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及及び啓発」を図るに止まっており、少数民族、あるいは先住民族としての権利を認めたものとは到底いえないものでした。また、民族としての誇りを尊重するという視点は重要であるものの、差別の撤廃という観点は極めてとぼしいものでありました。
これらの点を踏まえて、今後策定されるアイヌ政策が、先住民族の権利の実現や、差別の撤廃、人権の確立という観点を中心においたものとなることを期待したいと思います。
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