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ニートは怠けものか?小森哲郎(北九州市立大学名誉教授) |
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3-4年ぐらい前から、「ニート」という言葉に接することが多くなりましたが、最初のうちは、「働く気持ちのない、しょうがない人」などと思っていました。 ニートは、イギリスの青少年対策の対象となった16-18歳の者で、"Not in Employment,Education or Training"、「働こうとしない、学校にも通っていない、仕事に就くための専門的な訓練も受けていない」の頭文字NEETからとったものだそうです。 ニートの意味・内容などはまだ熟していません。しかし、事業所が固定せず、不定期でも、働いているフリーター、公共職業安定所(ハローワーク)に申し込むなどして、働く意欲をもっている失業者とは異なります。 ニートは、広い意味では「何もしていない」状態が長く続いている人ですが、厚生労働省は、15歳から34歳までの非労働力人口のうち、<1>学籍はあるが、学校に行っていない人、<2>未婚で家事・通学をしていない人、<3>既婚者で家事をしていない人をニートとしています。 ニートには、4つのタイプがあるといいます。<1>「ヤンキー型」=反社会的、享楽的、「今が楽しければいい」と思っているタイプ、<2>「ひきこもり型」=社会とのかかわりをもてず、こもっている不登校などのタイプ、<3>「立ちすくみ型」=就職を前に考え込んでしまい、行き詰まっているタイプ、<4>「つまずき型」=いったん就職はしたが、早く辞め、自信をなくし、その後の就職を躊躇しているタイプの4つです。 また、働く意志はあるけれど、何らかの事情で一時的に求職活動をしていない「非求職型」と、就業の意志のない「非希望型」にも分けられています。 ニートには、「働こうとしない怠けもの」と批判や軽蔑の意味が込められていることが少なくありません。しかし、ニートを生む要因を理解することが大切だといわれます。<1>親の無関心が生む自己評価の低さ(劣等感)、<2>知識の注入に偏りがちな学校教育、<3>学校でのいじめ、<4>希望する高校への進学の難しさ、<5>就職活動の中での挫折、<6>求人側(会社など)との希望・要求のくいちがい、<7>職場での不適応、<8>中途採用の厳しさなど、ニートを生む多くの要因があります。ニートの中には、学歴の高い、専門分野では突出した人、考え方が真面目で、ものごとを完璧にこなそうとする人もいるといわれます。 バブル崩壊後の長期にわたる景気の低迷、雇用者側の「即戦力」の要求、反面、新規卒業者優先の傾向―諸般の事情が「働けない若者」を生んだともいえます。 わが国のニートの数は、60万人を超えるといわれ、国の対策が必要なのは当然です。そのため、2003(平成15)年、「若者自立・挑戦プラン」がつくられました。<1>小・中・高校における勤労観、職場意識の形成などの「キャリア教育」、<2>若者の働く自信と意欲を涵養・向上するための「若者自立塾」、若者が集まりやすい「ジョブカフェ」での情報提供や相談、「就職基礎能力速成講座」(約10日、民間委託)、<3>学卒未就職者などを対象とする「若年者トライアル雇用事業」(3ヶ月以内の試行雇用)、<4>若者だけでなく、誰でも能力の向上を目指すためのインターネットによる学習機会の提供(草の根eラーニング・システム)などの諸事業が実施されはじめました。 青年に責任を押しつけるのではなく、みんなの問題として考えたいものです。 |
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2006年11月1日
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