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2008.05.26
意見・主張
  

児童養護施設経験者に関する調査研究事業 2007年度 報告書

A4判154頁

2007年度、「児童養護施設経験者の権利保障と人権啓発の課題」をテーマに、大阪府人権教育啓発事業推進協議会(大阪府・大阪市・堺市より構成)より「児童養護施設経験者に関する調査研究事業」を受託しました。そして13名に及ぶ施設経験者の方々の聞き取り調査と全国の学校を中心とした教育実践報告会を行ってきました。その中で、当事者でありながらもこれまで十分に意見表明できなかった施設経験者の方々から、家庭・学校・施設・就職・差別など多岐にわたるお話を伺うことができました。また、そうした声に応えようと、児童養護施設と連携を図りながら子どもたちの権利保障に向けて取り組まれている学校教育実践を報告いただきました。

 本報告書では、そうした体験や学校実践の特徴をまとめるとともに、それに基づく施設経験者の権利保障の課題をまとめていきました。

 その背景には、近年の児童虐待の実態の深刻化があり、児童相談所に寄せられた相談件数だけでも年間約4万件近いものとなっています。大阪府においても状況は同様で、2008年2月には岬町で虐待による死亡事件が発覚しマスコミでも大きく報道されたところです。そしてこの社会的背景には、戦後、家庭が担ってきた教育や福祉の機能が大きく低下してきているにもかかわらず、社会的養護の機能がそれに十分対応できていない今日の社会状況があります。

 こうした中、貧困・病気・虐待などの理由で親から分離され児童養護施設に措置された子ども達の課題への関心も次第に高まってきています。2007年6月13日から21回にも及ぶ「朝日新聞」「ルポ虐待 児童養護施設」はその象徴的な取組みであったといえます。

 しかし、2008年2月時点で全国で施設数563(大阪府内26、大阪市内10)、子ども数約3万1千人(原則18歳まで)という「少数性」と「親の自己責任論」などもあり、関心や認識そして取り組みは極めて弱いと言わざるを得ません。

 本報告書がこうした状況を考えていく一助となることを願っています。

<主な目次>

第 I 部 13名の施設経験者の聞き取り調査より

第1章 調査の趣旨と概要
第2章 先行研究と本調査の位置づけ
第3章 児童養護施設経験者の体験と権利保障の課題
第4章 児童養護施設経験者の大学進学等を支えたもの
第5章 児童養護施設経験者の学校から職業への移行過程

第 II 部 学校教育の実践報告より

第1章 施設の子どもたちに対する学校教育の取り組み
第2章 西宮市立船坂小学校の実践
第3章 西宮市立山口幼稚園の実践
第4章 西宮市立山口中学校の実践
  <参照> 1990年代をふり返る―――畑中 通夫
第5章 児童養護施設「遙学園」の取組み
第6章 児童心理療育施設「ひびき」の取組み
第7章 島本町立第二小学校の実践
第8章 島本町立第二小学校・分教室「みゅーず」の実践
第9章 島本町立第二中学校と分教室「みゅーず」の実践
第10章 児童養護施設に併設された小中学校の実践
第11章 学園(の子ども達)との出会いから問われ続けてきたこと
第12章 児童養護施設の子どもたちに関わって

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