本報告書は、2005-2007年度にかけて行われた、(社)部落解放・人権研究所による「部落問題に関する意識調査研究プロジェクト」の成果をまとめた報告書である。
部落問題に関する意識調査は、1965年の同和対策審議会答申の資料となった同和対策審議会による部落問題に関する意識調査を皮切りとして、「心理的差別」の状況を把握するために、主に各地方自治体を中心に行われることとなった。その後も部落差別意識の解消に向けた効果測定としての意識調査が何度も行われており、近年では人権問題に関する意識調査へと課題を拡大した調査が行われている。しかし、膨大な数の調査が行われているものの、意識の現状・変化など、「何が、どこまで明らかになったのか?」という問いに答えることができるような、総括的な研究はこれまでほとんど行われてこなかった。このような現状において、本プロジェクトは、これまで行われてきた部落問題に関する意識調査の成果と課題を明らかにすることを目指してきた。
本書は2部構成になっている。
序章「近年における部落問題・人権問題意識調査の動向」では、2000年以降に行われている同和問題・人権問題意識調査を・従来型の部落問題を中心とした意識調査、・他の人権問題も取りあげられているが、少なくとも部落出身者に対する忌避的態度をとりあげるなど部落問題にウエイトを置いている人権意識調査、・部落問題を単に人権問題のひとつとして位置づけた人権意識調査の3つに分類し、これらの分類に基づいて、調査結果の特徴を描き出している。
第1部「各自治体における意識の変遷」は、大阪府・大阪市・堺市・北九州市・名古屋市といった、1970・80年代から近年に至るまで、継続的に調査が行われている自治体ごとに、調査結果の変化の特徴と啓発の課題を導き出している。
第2部「意識をめぐるさまざまな啓発課題」は、プロジェクトメンバーそれぞれの問題意識に基づき、「分散論」「寝た子を起こすな論」に関する動向と課題、「部落差別をなくす方法」をめぐる意識、結婚差別の認識状況とその動向、「結婚」をめぐる意識について、多数の調査報告書を用いた分析が行われている。
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