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2008.07.17
意見・主張
  

学習者とともに考える同和問題に関する参加型学習
「同和問題に関する参加型学習教材開発事業」報告書

2008年、A4判、130頁

 「同和問題に関する参加型学習教材開発事業」は、「大阪人権教育啓発事業推進協議会」からの委託により、(社)部落解放・人権研究所が実施した事業である。

 人権啓発に参加型学習が積極的に取り入れられるようになって10年以上たつが、同和問題に関する参加型学習の教材開発は充分ではなく、また、同和問題を中心的に扱うファシリテーターは未だ少ない。そのため、国内外の参加型学習の先進的実践や、同和問題にかかわる意識調査結果も踏まえつつ、同和問題に関する参加型学習をすすめる際の留意点の整理と、教材開発を行った。

 第1部では、当研究所の「部落解放・人権大学講座 ゼミナールコース」の場で人権啓発や参加型学習に関して様々な角度から話し合った内容をもとにしながら「参加型による学び」についてまとめた。第1章は「同和問題を人権啓発で扱うときの難しさ」と題し、「なぜ参加型学習で同和問題を扱うことは難しいのか?」「おとなが効果的に学ぶ場をつくるために指導者が留意すべきこと」といったテーマで行った議論をまとめた。特に、オハイオ教育庁の「環境教育者の2つの帽子」という文書を素材に行った議論では、人権研修を行う際、「人権研修リーダー(人権教育者)」と「人権擁護者(人権活動家)」という2つの立場を意識する必要があるが、それが混乱していると、たとえば研修中の差別発言に対して活動家として抗議するのか、教育者としてその発言を考えるように促すのか、せめぎあいが起こり、教育を行うことが難しくなるのではないかと話し合われた。

 第2章は、ゼミ参加者がつくった参加型教材の紹介と実践記録を掲載した。日常、実際に起きうる部落差別の課題(カムアウト、土地差別・校区再編問題、差別発言への対応、結婚に関わる相談など)を具体的に取り上げ、実際に差別に直面した場合にどのような行動ができるかを考える教材づくりに取り組んだ。

 第2部では、「同和問題に関する参加型学習教材開発研究会」での議論を踏まえた原稿4本をご寄稿いただいている。2005年度「人権問題に関する府民意識調査」結果からは、参加型による人権啓発は、「人権」に関する思考と態度を『鍛える』ための方途として相当の有効性を持つだろうという指摘がなされている。

(文責:栗本知子)

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