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従来の運動史的枠組みを越え、「解放令」から第二次大戦にかけての三重という一地域の姿を丹念に描きながら、地域社会における近代の部落問題の普遍的側面を浮かび上がらせる。

地域史のなかの部落問題
近代三重の場合

●黒川みどり 著
A5判・318頁・3月発行・定価3500円+税
ISBN4−7592−4218−X

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もくじ

はじめに 

第一章 「解放令」と「旧習」の温存

「解放令」の発布ー「一君万民」と「開化」の理念
「開化」と「旧習」の対抗
権力による「旧習」の追認 

第二章 「特殊化」の標識の成立と「国民」化への努力

「貧民問題」の浮上
コレラの流行と被差別部落に対する警戒
「特殊化」の標識の成立
町村合併における排除
「特殊」視払拭の試みー矢川規約書の制定
村々での部落改善運動の生起
皮革産業の成長 

第三章 部落改善政策の展開と人種主義の定着

一 地方改良運動下の被差別部落 

部落改善政策の開始
犯罪防止への関心ー被差別部落・国児学園
部落改善政策の地域での展開
規約と監視の貫徹ー桑名郡深谷村彰栄会
就学の督励ー三重郡常磐村
神社合祀の遂行
税の滞納矯正

二 人種主義の定着 

『特種部落改善の梗概』に表れた人種主義
人種主義の浸透
地域における人種主義の受容
屠場の発展と村営化

三 部落改善政策のゆらぎ 

三重県同志会の結成
部落改善政策、その後

第四章 自力解放の模索

一 米騒動前夜の被差別部落 

大戦ブーム下での経済格差の進行と差別
米価の暴騰と被差別部落の困窮 

二 米騒動の発生

被差別部落民衆の蜂起
米騒動非発生地域の実態ー部落産業の好況

三 部落問題認識の転換 

つくられる「暴民」像
危機意識の増大と救済対策の開始
「融和」の導入
地域における政策の展開 

四 「誇り」と「自覚」の追求

差別の不当性の自覚
差別糾弾運動の成立ー飯南郡鈴止村
徹真同志会の結成 

第五章 ‡€国民‡≠ニ‡€無産階級‡≠ヨの一体化を求めて

一 自主自立の宣言 

全国水平社への結集
三重県水平社の創立
「エタ」としての誇りと「同化」の希求
米騒動の傷跡
差別糾弾闘争の広がりと世論
小作争議の高揚と日本農民組合三重県連合会の成立
自力主義の壁ー水平社未組織部落の産業と生活

二 無産階級への一体化を求めて 

河合秀夫と『愛国新聞』の創刊
‡€労働者になる‡≠アとー三重県青年連盟の成立
「大国」意識とプロレタリア意識のはざま
‡€知識‡≠フ渇望ー松阪社会思想研究会の結成
無産階級への「同化」
農民運動拡大の障壁 水平運動への批判の噴出
非共産主義派の水平社運動

三 三重県社会事業協会による水平運動対策の模索 

三重県社会事業協会融和部の成立
『聖戦』グループの成立
『聖戦』グループと融和運動のつながり
修養・教化と事業による運動切り崩しの試み

四 水平社の無産階級運動への進出 

「政治運動」への進出
水平社の位置づけの後退
三重県無産団体協議会の結成
運動の戦闘化ー三重合同労働組合による労働争議の支援
小作争議の長期化

五 浮かび上がる差別 

差別糾弾闘争の再燃
差別事件の告発
協会融和部の被差別部落調査
「融和ノ障碍」としての差別問題

六 弾圧の強化と運動の非合法化 

相次ぐ弾圧と最左派への選択
大沢茂獄死事件
非合法運動の展開
北勢水平社の成立
「凋落」する水平運動への挑戦ー融和運動の開始 

第六章 「国民一体」の創出とその矛盾

一 階級的同化運動と国民的同化運動の対抗 

昭和恐慌下の経済的窮乏
地方改善応急施設事業の実施
伊勢表の更生ー協同組合主義の採用
「新青年運動」の開始
「中堅青年」の掌握
部落経済更生運動の「模範村」の誕生
生活防衛闘争と失業者同盟の結成
農民運動の戦闘化と全農全国会議への加盟
共産主義運動の展開と五・二二事件
善覚寺批判の噴出ー善覚寺差別事件 水平社解消論をめぐる「解消派」と「現状維持派」
大衆運動の再燃
「国民相愛融和」の水平運動ー北勢水平社の活動の開始
階級的同化と国民的同化

二 「国民一体」の創出ー弾圧と融和運動の攻勢 

三・一三事件と共産主義運動の逼塞
転向の進行
「皇国精神」による融和運動の粉飾ー三重県厚生会の成立
大衆運動の高揚と終焉ー衆議院議員選挙闘争と朝熊闘争
「皇国精神」と部落民意識のはざまー三重県農村厚生指導者講習会 
「国民一体」論の注入ー融和教育の開始 

三 「新体制」下での「国民一体」実現への期待 

「人的資源」の調整と部落形態の解消ー「満州」移民
もう一つの解消論ー部落厚生皇民運動
大政翼賛運動への合流ー 同和奉公会三重県本部の成立
裏切られる期待

あとがき 

文献一覧