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2009.05.13
書籍・ビデオ案内
 
Human Rights 2009年5月号(NO.254)

グーグル・ストリートビューを問う

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グーグル・ストリートビュー
-何がどう問題なのか

園田 寿(甲南法科大学院教授)

 「既存の法規制に合わない新サービスには法的リスクやクレームが付きものだが、Googleは世界中の法律や文化を尊重している」。(グーグル社法務担当副社長ケント・ウォーカー氏)

 革新的なテクノロジーが発明された場合の態度として、「何が起きるか分からないが、とにかくやってみよう」という能動的な態度と、「何が起きるか分からないので、とにかく控えておこう」という慎重な態度に分かれるように思う。反規範的な態度はとらないとウォーカー氏は言うが、どうもグーグル社の経営方針は前者のようである。

一 「グーグル・ストリートビュー」とは何か

 グーグル社が提供する「グーグル・ストリートビュー」(以下では、「GSV」と略す)とは、地図に表示された道路沿いの風景をパノラマ制止画像で眺めることができる、インターネットの無料サービスである。具体的にどのようなものであるかを、文字で説明することは難しいが、地図でブルーに表示された道路上の任意の一点をマウスでクリックすると、ディスプレイにその周辺のかなり鮮明な静止画像が表示され、マウスのカーソルを動かすことによって視座を前後左右に移動させることができる。さらにその時々に表示される画像を三六〇度回転させることもできるため、あたかも現実にその場所を移動しているかのような気分になる。

 このサービスは、二〇〇七年五月にアメリカで始まり、日本では、二〇〇八年八月に、札幌・小樽・函館・仙台・東京・さいたま・千葉・横浜・鎌倉・京都・大阪・神戸の各都市(必ずしも網羅的ではない)でスタートした。専用自動車の屋根に地上から二・五メートルの高さに、三六〇度撮影可能な特殊カメラを設置して、それを走らせ、一都市について二-三ヶ月かけて網羅的に街頭の風景を撮影し、データベース化した。グーグル社は、現在、この壮大な計画を他の都市にも拡張することを考えている。

 離れた現場の様子をインターネットを通じて確認できることから、さまざまな有益な利用方法が考えられるが(GSVの開始直後から不動産業などのビジネスに応用する動きが生じた)、他方で、私的な生活圏を含む日常空間が網羅的に鮮明な画像としてデータベース化されていることから、GSVの発想そのものにプライバシーや防犯上の観点からの不安ないしは疑問を感じる人も出てきた。新しい技術は、それが革新的であればあるほど、既存の制度との軋轢が生じやすい。

 かつてヨーロッパでは、鉄道営業が開始されたときに、あまりの危険性ゆえに列車の運行そのものが違法だと裁判所が判断したこともあったが、高速度交通機関に内在する危険性について物理的コントロールや規範的コントロールを充実・強化させながら、それを社会的に許容していく方向が選択されたのだった。しかし、有用性が分かっていても、何が起こるか分からないといった漠然とした危険性を完全に払拭しきれない以上は、社会的に認めるべきではないような科学技術もある。革新的な技術が社会に受け入れられるかどうかは、歴史的に形成されてきた社会倫理的な秩序の枠内に、それが収まりきれるかどうかにかかっている。

 GSVについても、プライバシーや個人情報の保護といった、情報化社会における人権保障のための重要な仕組みの中に収まりきれるのかが問題となっている。

二 GSVに対する社会の反応

 GSVの発想の奇抜さがサービス開始直後から話題になり、実際に体験してみると、シームレスに動く画面とそこに映し出されるパノラマ画像の鮮明さに多くの人が驚きの声をあげた。私も、いくつかの場所を興味津々に検索し、「散策」した。とくに、四十数年前に通っていた小学校が、昔の面影を残しながらパソコンのディスプレイに表示されたときには、懐かしさで胸がいっぱいになった。小学校の近くに仲の良かった友だちの家があったはずだと、カーソルを移動させれば、記憶とほぼ同じイメージでその家がまだそこにあった。ランドセルを背負った友だちの顔が浮かび、声が聞こえ、マウスを動かす手が思わず固まってしまうほどだった。

 しかし、感動はすぐに冷めてしまった。「わが家」もまたインターネットを通じて世界中のだれかから見られていることに気づき、あわてて検索してみると、庭に干してあった洗濯物までがはっきりと分かる状態にあったのだった。

 アイシェアという調査会社が、日本でGSVのサービスが開始された直後に、GSVの認知度や利用度についての調査を行っている(調査対象は二〇代から四〇代を中心とする男女のネットユーザー。調査期間は八月一九日-二一日。有効回答数は三七六)。それによると、認知者は全体の約七割であり、そのうちの六五%がGSVを利用したと回答している。使い途としては、旅先や未知の訪問先の「下見」、「道案内」、ホテル、商店などの外観や集合場所の景観を確かめる手段などが挙げられた。他方、「今後、日本全国がストリートビューで見られるようになるとしたらどのような面が懸念されると思うか?」との問いには、七割弱の人が「プライバシー侵害」、六割弱が「犯罪」、四割弱の人が「そもそも勝手に家が晒されることに遺憾」と答えている。いずれの項目も女性のほうが不安と感じている比率が高いのが特徴的である。また、世代別では年代が低いほど不安を感じている比率が高く、「プライバシー侵害の不安」は二〇代が七七・八%だったのに対し、三〇代は六七・二%、四〇代は六三・三%であった。

 また、サービス開始直後から、グーグル社に対する公的機関からの批判的な意見の表明も行われている。たとえば、東京都杉並区は、八月一二日に口頭でグーグル社にプライバシー侵害の懸念を伝えているし、その後、東京都町田市議会(一〇月九日)、北海道札幌市議会(一二月一一日)、奈良県生駒市議会(同月一一日)、大阪府茨木市議会(同月一六日)、奈良県三郷町議会(同月一七日)、大阪府高槻市議会(同月一八日)などが、何らかの対応を求める意見書を採択している。また、福岡弁護士会(一二月一日)や新潟弁護士会(同月二四日)などは、グーグル社に対してサービスの中止などを求める声明を出している。このような動きは、全国各地で、現在まで続いているが、これらは、主としてプライバシー保護と防犯上の観点からの問題提起であるといえよう。

 では、このようなGSVに対する批判的な意見について、グーグル社はどのように答えているのであろうか。

 個人の顔や車のナンバープレートについては、いわゆるボカシを入れているし、街頭風景にしても、すべて「公道」からの撮影であるから問題はない。これがグーグル社の基本的な見解のようである。

 そこで、以下では、次の三点から、グーグル社のこの見解を検討することにする。

 第一は、「公道」から街頭の風景を網羅的に撮影することは許されるのか。

 第二に、そのようにして収集した土地のデータを、住所をキーワードとして「検索可能」にして、不特定多数に提供することに問題はないか。

 第三に、グーグル社の行為は、個人情報保護法に抵触しないのか。

三 「公道」から街頭の風景を網羅的に撮影することの問題性

(1)まず、通行人や車の撮影が問題となるが、グーグル社の考えは、公道においてはプライバシーは放棄されているが、念のために、顔や車のナンバープレートには、いわゆるボカシを入れているので問題はない、というものである。たしかに、われわれは外出するとき、つねにマスクやサングラスをかけたり、変装したりして公道を歩いているのではない。車のナンバープレートにしても、隠すことは逆に違法行為となる。しかし、公道において人の顔や服装などを自由に撮影してもかまわないかといえば、そうではない。すでに、わが国の裁判所では、公道においてみだりに顔等を撮影されない権利があることは認められているのである。

 たとえば、警察官がデモ隊を撮影したという事案では、対公権力との関係における写真撮影の合法性が問題となったが、最高裁は、「個人はその承諾なしにみだりにその容ぼう姿態等を警察官から撮影されない自由を有する」と明言した(最高裁昭四四年一二月二四日判決、「京都府学連事件判決」)。さらに、対民間との関係においては、被告が、公道を歩く原告の承諾を得ずに、原告の写真を撮影し、これをインターネットのサイトに掲載したという事案で、東京地裁は、「このような被告の行為は原告の肖像権を侵害するものであり、表現行為としての公共性と目的の公益性を備えているものの、表現方法としての相当性を欠くものといわざるを得ないから、その違法性は阻却されない」とした(東京地裁平成一七年九月二七日判決)。

 要するに今の判例の基準からいえば、公道における個人の撮影が許されるかどうかは、被撮影者の社会的地位・活動内容・撮影の場所・撮影の目的・撮影の態様・撮影の必要性等を総合的に比較検討して、みだりに写真に撮られないという、被撮影者の人格的利益の侵害が、社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決めるべきであるということになる。

 では、GSVの場合はどうか。

 まず、道路上の風景を網羅的に撮影するという、その目的も、必要性も明確ではない。さらに、通行人を撮影するという点も、たとえば街角でのスナップ写真に偶然通行人が写ってしまったという場合と明らかに異なる。GSVの場合、街頭風景の撮影が意図的かつ網羅的であるという点から、通行人の撮影についても、写ってもやむを得ないという意味での認容(未必的な意図)があることは否定できない。また、公道からであっても、住居の中などを無断で撮影するのは、明らかに違法である。状況によっては、軽犯罪法の「のぞき」の罪に該当する。グーグル社は、ユーザーからの申し出による削除を行っているが、そのような方式では、このような撮影行為の違法性は治癒されないであろう。

(2)第一の問題に関連して、GSVには「私的生活圏」のデータが含まれていることから、防犯上の問題も生じる。確かに、GSVが、ストーカー行為や空き巣などの犯罪に利用される可能性は否定できないが、しかし、その危険性は抽象的な段階にとどまっており、これだけでGSVを停止させることができるかは疑問であるように思う。また、現実に犯罪に利用された場合に、グーグル社の法的責任を問うことも難しいように思う。

 これについては、いわゆるファイル共有ソフトを作成し、ネット上で提供した作者が、著作権法違反(違法コピー)の(共犯)に問われた「ウィニー事件」が参考になるだろう。第一審である京都地裁は、まず、ウイニーが圧倒的に違法行為に利用されているという事実を認定し、作者がそのような事情を認識しながらウィニーを不特定多数に提供したのであり、その点において、著作権法違反の幇助の責任は否定できないとした(京都地裁平成一八年一二月一三日判決)。本件は、現在大阪高裁に控訴され、裁判所の最終的な判断は固まっていない。私自身は、京都地裁のような根拠では、幇助犯として処罰するだけの犯罪的な「故意」は不十分であると考えるが、かりにこの京都地裁の論理を前提にしても、GSVが圧倒的に違法行為に利用されているという前提的事実がない以上、住居侵入や窃盗行為などの犯罪行為に対するGSVの違法性を問題にすることは難しいように思う。

四 収集した土地に関するデータを、住所をキーワードとして「検索可能」にし、それを不特定多数に提供することの問題性

 第二の問題に対してグーグル社は、GSVにおいて「住所」で検索されるのは「場所」であって、GSVで「氏名」が検索されるわけではなく、また「氏名」から「住所」が検索されるものでもないという。しかし、GSVに「住所」を入力して、単に「場所」が検索されるにすぎないというのはかなりの強弁である。GSVでは、「住所(居所)」が「場所」、つまり「点」としてではなく、いわば三次元のかなり鮮明な立体的情報として表示されている。そこには、たとえば(ナンバープレートが隠されていたとしても)保有する自動車の車種や年式(車検や買い換えの時期、あるいは所得水準などが推測される)、洗濯物(一人暮らしかどうか、女性だけの家族構成かどうか、老人世帯かどうかなどが推測される可能性がある)、家の外観など、奥行きのあるリアルな生活情報そのものが「住所」によって表示されるのである。

 また、従来から「住所」はそれじたいでは個人を特定できないので、原則として「個人情報」には当たらないと考えられてきた。しかし、GSVに表示された画像の外観上の特徴から特定個人の住居であることが判明するケースも多い。たとえば、要人警護が行われている大物政治家などの場合、自宅前に警護の警察官が張り付いている画像が見つかる場合があり、そのような場合は比較的容易に個人を特定することが可能となる。他に、芸能人の自宅や著名人の自宅探しもネット上の掲示板などで行われている。

 このように、GSVの出現は、「住所(居所)」に付随する無数のデータ(生活情報)を意図的かつ網羅的に収集している点で、「住所」を「個人情報」の問題としただけではなく、まさに「プライバシー」の問題として深刻化させたといえよう。

五 個人情報保護法の観点からの問題性

(1)個人情報保護法は、高度情報通信社会における個人情報の適正な取扱いに関する基本理念を定めた法律であり、国や地方公共団体の責務のみならず、民間の事業者に対する遵守義務などを規定している(二〇〇五年四月より施行)。法律では、氏名や身体的な特徴など、特定の個人が容易に識別できる情報を「個人情報」と定義し、住所録や名刺ファイルのように、個人情報が検索可能なように整理されたものを「個人データ」として区別している。そして、個人データのうちで、開示や内容訂正などの権限がある個人データを「保有個人データ」とし、過去六ヶ月のいずれかの日に、五〇〇〇人以上の個人データを保有する者を「個人情報取扱事業者」として、不正な取扱い防止のための管理義務を課し、これを守らない場合、情報主体の届け出や訴えにより、最高で事業者に刑罰を科すことができる。

(2)GSVの画像データからすでに個人が特定される場合は、その画像データは「個人情報」に該当する。そして、法律は、個人情報取扱事業者が「個人情報」を「取得」した場合、あらかじめその利用目的を公表している場合を除いて、利用目的の本人通知または公表が必要であるとしている(法一八条一項)。街頭風景の撮影に際して偶然写った個人の画像が法律にいう(個人情報の)「取得」に当たるかが解釈として問題となるが、前述のように、街頭風景を意図的かつ網羅的に撮影している点において、通行人の画像データについても意図的な収集といえるのであり、法にいう「取得」に当てはまると思う。そうすると、利用目的の本人通知は事実上不可能であるから、少なくとも利用目的の公表が必要となるが、グーグル社がそれを十分に行っているかは疑問である。

 さらに、住所をキーワードに土地のデータを検索できるようにしたシステムをインターネットで提供することは、「個人データ」の第三者提供に該当するが、個人情報保護法は、事前の本人同意を欠く場合の第三者提供を原則禁止としている(法二三条一項)。ただし、事業者が、個人データの第三者提供について本人からの請求によって停止するとしている場合に、次の事項について、事前に本人に通知し、または本人が容易に知り得る状態に置いているときは、個人データを第三者に提供することができると規定している(法二三条二項)。

  1. 第三者への提供を利用目的とすること
  2. 第三者に提供される個人データの項目
  3. 第三者への提供の手段又は方法
  4. 本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止すること

 グーグル社は、一応、本人からの申し出によってGSVの画像を削除しているが、基準や方法などが不明確であり、法律の条件を満たしているとは言いがたい。そもそもグーグル社はGSVにおける画像データを「個人情報」とは位置づけていないのである。

(3)GSVにおいて特定個人が識別されてはいないが、「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるもの」(法二条一項)もまた「個人情報」に該当する。したがって、顔にボカシが入っている場合であっても、服装(たとえば制服)や髪型、持ち物等から「容易」に特定個人を識別できる場合も「個人情報」となる。問題となるのは、「住所」である。住所から単に地図上の地点が示されるだけでは、通常は特定の個人を識別できないので、住所は「個人情報」には該当しない。しかし、住所によって示された情報からさまざまな情報を読み取ることが可能であり、それを他の情報と「容易」に照合することが可能であり、それによって特定の個人を識別できれば、全体として「個人情報」に該当することになる。

 問題は、この「容易性」についてどのようなレベルを想定するかである。現在、さまざまな有用かつ手軽な検索システムが開発されており、複数の検索システムを組み合わせることによって、求める情報にたどり着くことが可能である。したがって、ネット利用者の平均的なスキルを前提に、多少煩瑣な手順を経ることになっても、なお「容易性」の枠内にあると考えるべきであろう。

六 まとめ

 住居の中が撮影されている場合や、顔や容ぼうが明瞭である場合、あるいは顔にボカシが入っていても個人が特定可能な場合、GSVはプライバシー侵害の疑いが濃厚である。問題となるのは、「場所」から「住所」が特定され、さらにそこから「容易」に個人が特定されるかである。ほとんどの場合、必ずしも「容易」とはいえないかもしれないが、ケースによっては「容易」な場合も考えられる。また、すでに住基ネット(全国民対象の巨大データベース)が構築されており、最近では納税者番号制度や社会保障番号制度の導入、住基ネットとの統合なども議論されている。「容易性」は、このような状況の中で判断すべきである。

 GSVは、自分が一方的に世界から「見られる」という点で「気持ちの悪さ」を感じさせるものだと思うが、たとえば「私の家」が実際にどれだけ「見られたのか」、また「誰から見られたのか」を、「私」が確かめる(見返す)技術的方法をGSV上に設置すれば、少なくとも「一方的に見られる」という状況は緩和されるかもしれない。

 まだサービスの開始から間がないため、どのように評価するべきか難しい点もあるが、少なくとも現時点では、GSVはプライバシー保護の観点から問題のあるツールだといえるだろう。数々の素晴らしい革新的アイデアと技術でネット空間の熱い推進力となってきたグーグル社であるが、どうもGSVに関しては事前の配慮が足らなかったようである。

(注1)http://www.itmedia.co.jp/ne-ws/articles/0809/29/news080.html

(注2)http://japan.cnet.com/marketing/story/0,3800080523,20379432,00.htm

(注3)自治体等がこのような問題点を指摘する背景には、グーグル社がGSVを日本で開始する際に事前協議を行う公的な機関がなかったという制度上の問題もある。日本と同じ時期にサービスがスタートしたオーストラリアでは、GSVが開始される前に、グーグル社と国の機関であるプライバシー専門会議との協議がなされており、同機関はGSVが持つ危険性として次の四点を指摘している。すなわち、<1>DVやストーカーの被害にあう可能性や女性の一人暮らし、幼い子どもがいる家庭等が判明することによる「人々の安全に対するリスク」。<2>侵入や脱出を容易にすることによる「建物の安全に対するリスク」。<3>公共の場でのテロに利用される可能性からの「公共の安全に対するリスク」。<4>公共の場であってもプライバシー侵害の問題は生じ、ボカシを入れていても特定可能な場合はあるという「個人のプライバシーに対するリスク」である。これに対して日本では、このような協議はまったく行われていない。日本にもこのような公的機関が必要であろう。石田・後掲一三九頁以下参照、坂本・後掲二二頁参照。

(注4)http://www.itmedia.co.jp/ne-ws/articles/0809/29/news080.html

(注5)http://www.itmedia.co.jp/ne-ws/articles/0809/29/news080.html

(注6)「個人情報」とは、「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)」と定義されている(個人情報保護法二条一項)。特定個人が識別可能かどうかが問題となる。それじたいは、直接、特定個人を示すものではない、個人の身体、財産、社会的地位、身分等の属性に関する情報でも、氏名などと一体となることによって特定個人を識別可能とするものであれば「個人情報」となる。

(注7)グーグル社の「プライバシー・ポリシー」(http://www.google.co.jp/privacypolicy.html)のどこにもGSVについて触れられていないし、「Googleのプライバシーに関するよくある質問」(http://www.google.co.jp/privacy_faq.html#personalinfo)の中では、「個人情報」とは、「Googleにご提供いただく情報のうち、お名前やメールアドレス、課金情報など個人を特定できる情報、または Googleがそれらの情報と合理的に結びつけることのできる他のデータを意味します」とされている。

(注8)実際に、街頭で抱き合っている高校生カップルの画像が偶然撮影され、ネットで話題になったことがある。顔にはボカシが入っていたが、制服や髪型、持ち物などから個人が特定された。ちなみに、この画像はすでにGSVからは削除されているが、ネットで探し出すことは簡単である。一度ネットに流れた情報を、ネット空間から完全に削除することはきわめて困難なのである。

(注9)たとえば、GSVの画像上でクリックした時の座標データとクリックした人(見に来た人)のIPアドレスを関連付けさせて、自宅近辺を「見に来た」相手方の情報を取り出せるような仕組みをGSVの中に設定することが考えられる。

[参考資料]

  • 石田英敬「『グーグル・ストリートビュー問題』とは何か」部落解放・人権研究所編『インターネットと人権を考える』(解放出版社、二〇〇九年)一三七頁以下。
  • 坂本団「グーグル・ストリートビューを考える」『月刊 大阪弁護士会』二〇〇八年一二月号二〇頁以下。
  • 園田寿「インターネットと人権―グーグル・ストリートビュー問題を中心に―」『世界人権宣言大阪連絡会議ニュース』第三一九号
     特に、次の二つのサイトはGSV問題を考えるにあたって非常に有益であった。
  • 北口学「ストリートビューというサービス開始の日―爆発的に増殖する深刻な問題を見つめて」ジャーナリスト・ネット(http://www.journalist-net.com/)に連載中。
  • 高木浩光@自宅の日記(http://takagi-hiromitsu.jp/diary/200808.html)
     個人情報保護法についての解説として、次の資料がネットで簡単に入手できる。
  • 経産省「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」(http://www.meti.go.jp/feedback/downloadfiles/i41013fj.pdf)
  • 「経産省ガイドラインに関するQ&A」(http://www.meti.go.jp/policy/it_poli-cy/privacy/q&a.htm)
著書