特 集
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-要約-
本稿は遺跡出土の牛馬骨を中心に、各種の歴史資料も用いつつ、牛馬に関わった人間の姿を古代から近世まで探ったものである。牛馬は古墳時代に日本列島に渡来して以来、なくてはならない大型家畜であった。その解体処理集団を意識した考古学研究はすでに二〇年の研究史があるものの、必ずしもこうしたテーマが定着したとは言い難い。また『大阪の部落史』以後の新資料は乏しい。本稿は、第一〇巻所収の旧稿等のエッセンスである。
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積山洋
別所秀高 |
大坂賤民法制の構造と特質覚書 → 全文PDF
-要約-
畿内における幕藩制の独自の展開という主題は、一九六〇年代の摂河泉研究以来、近世史の自立(中世封建制とは別に近世封建制が存立するという課題意識)の流れのなかで生まれた。その成果が非領国論であり法制史の分野での大坂法の提起であった。出入筋とりわけ金公事での独自の発達をこう称した。本稿は主として吟味筋の検討を通して大坂町奉行所で独自の発達を遂げた被差別民の手続き・扱いを「大坂賤民法制」と規定し、そのアウトラインを提起するとともに、その一部として民衆法世界と法制の柱を検討した。
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のびしょうじ |
壬申戸籍の編成─大阪府の場合 → 全文PDF
-要約-
壬申戸籍は差別戸籍であるということで、厳重に包装封印して法務局に保管されて久しい。そのため、今日、壬申戸籍について実証的に研究することは非常に困難な状況にある。とはいえ、研究者の中には、誰でも簡単に閲覧することができる関係法令に目を通すこともせずに壬申戸籍について論じている者もおり、混乱していることも事実である。本稿では、まず、一八七一年の戸籍法で大阪を含む三都府および開港場において、すぐに取りかかるべきものとしたのは何であったかを明らかにする。次いで、大阪府の「戸籍編製心得」「戸籍編製法」および壬申戸籍の雛形にもとづき、大阪府の壬申戸籍の編成について考察する。
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北崎豊二 |
論 文
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就職困難者の貧困と社会的排除─大阪の地域就労支援事業相談者実態調査から見えてきたもの → 全文PDF
-要約-
二〇〇七~〇八年に大阪における地域就労支援事業の就職相談利用者について、彼らの生活実態にかかわる調査を行った。一般に、彼らは、様々な就職阻害要因を持つと言われてきたが、その内実を総体的に調査されたのは今回がはじめてであろう。この論文では、それによって明らかとなった相談者たちの様々な困難を提示した。それらは、一言でいえば、貧困と、人とのつながりの希薄さや社会制度との関係性の弱さといった社会的排除であり、そしてそれらが過去の生育環境と一定の関連性があることも明らかとなった。
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福原宏幸 |
韓国の識字法─「平生教育法」について → 全文PDF
-要約-
「韓国の識字法」と形容される識字関連法「平生教育法」が二〇〇八年二月二八日公布、施行された。「平生教育」は日本でいう「生涯教育」にあたり、法律の大きな柱として識字教育充実をうたう。国、地方自治体が識字教育推進の責務・財政支援など規定するほか、従来の識字教室以外に初等・中学校施設での教室開設など学べる場が増えたことなど画期的な内容をもつ。しかし学歴認定をめぐる評価制度導入に対して市民団体は、「文(ム)解(ネ)教育の趣旨に合わない」と反対の姿勢をとるなど問題点も浮上している。以下、識字関連条項の翻訳、解説をする。韓国では識字を文解、識字教室を文解教室といい、本稿では識字を文解、識字教室を文解教室と表記する。
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川瀬俊治 |
短 信
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企業によるミレニアム開発目標の実現
─「国連グローバル・コンパクト」と「ビジネスからの行動要請」 → 全文PDF |
菅原絵美 |
書 評
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苅谷剛彦他著『岩波ブックレットNo738 検証地方分権化時代の教育改革杉並区立「和田中」の学校改革』 |
諏訪晃一 |