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2006.12.06
<人権を大切にしたキャリア教育の実践>
 
人権を大切にしたキャリア教育の実践

小学校におけるキャリア教育の取組み
─ 松原市立布忍小学校 ─

幸  隆之・矢野 智史

1 布忍小学校の人権学習の歩み

松原市立布忍小学校には、生活・学力・人間関係などに関し様々な教育的配慮を要する子どもが数多く在籍している。そのような子どもたちが、自分たちの地域から目をそらすことなく地域について知り、学び、そこから地域と自分に誇りを持っていくことが求められている。布忍小学校の人権学習の歩みは、人と人とのつながりを、人間のぬくもりを大切にし、地域全体で、自分に誇りを持てる子どもたちを育てていくことを教育の中心的課題に据えての歩みであるといえる。

そのなかで最も大切にしてきたことは、聞き取り学習による人との出会いである。特に、子どもたちにとって最も身近な大人、保護者からの聞き取りである。子どもたちは、毎日接している保護者の姿からは見えなかった生き方や思いに直接触れ、感動し、共感していく。そしてこのことは、保護者との絆を深めるとともに、かけがえのない自分を認識するきっかけともなった。

そして、1983年、保護者からの聞き取りを一つの軸として、人権学習の通年化、系統化を図った。それは、集団づくりを基盤に、自分に身近なところから次第に広い世界に目を向けるなかで自らの生き方を考えていくという組み立てであった。4年生は自分や仲間の保護者の仕事に対する思い、がんばりを知り、5年生は自分史の学習の中で、今まで育ててくれた保護者の思いを改めて見つめることで、自らの生き方を考えるきっかけをつかみ、6年生はヒロシマで自分自身を語り、進路学習を通して夢や生き方を考えていく。

このように、人との出会いを大切にし、共感的理解を育む「生き方学習」が布忍小学校の人権教育の土台になっているのである。

2 “ぬのしょう、タウン・ワークス”とは

布忍小学校では人権を基盤に今日的な教育課題をテーマに展開している「総合的な学習の時間」の取組みを、“ぬのしょう、タウン・ワークス”と呼んでいる。1980年代はじめ、それまで取り組んできた人権・部落問題学習を土台として、カリキュラムづくりに着手した。以降、毎年の実践の積み重ねを通じて練り直されていく中で、1996年、“ぬのしょう、タウン・ワークス”が生まれた。「ぬのせ」という「タウン」に出かけ、子どもたちが中心になっての「ワークス」、つまり、参加・体験・交流を通して、子ども達が主体的に学ぶ総合学習が、“ぬのしょう、タウン・ワークス”である。

その中で、従来取り組んできた人権・同和教育の取組みを通じて、私たちが大切にし、これからも継承すべきであるとした点は、以下の3点である。

  • 自分の生活、親の労働、自分史に返し、自分を振り返り、自分の問題として考えることを大切にする。
  • 聞き取り・フィールドワーク等を通して、地域の方との出会いや感動、体験を大切にする。
  • 集団づくりと結び、子どもの共感・感動を通して子どもと子どもをつなぐことを大切にする。

 子どもたちが様々な課題に出合ったとき、他人事としてとらえるのでなく自分の問題としてとらえることができるようになるということを、布忍小学校では常に大切にしてきた。一人ひとりの子どもたちは、それぞれの生活体験、それぞれの思いを持っている。その子どもたちが、新しい様々な教育課題に出会うなかで自らを多様な立場に置くことができるようになる。広い視野で物事を見つめたり、世界の中の自分の位置を眺めたり、様々な立場に身を置いて考えたりすることは、子どもたちの生き方を切りひらくために欠くことのできない経験となる。そして、そのような経験を通じてこそ、豊かな人権認識と幅広い自尊感情の育成が可能になると考えている。そのために、次の3点を大切にしてきた。

 1点目は、一人ひとりの子どもたちが、仕事の学習や自分史の学習、進路学習という生き方学習を通して自分自身に向き合い、自らの生き方を模索する糸口をつかむことである。

 2点目は、共感的理解を大切にした学習の手法である。自分自身の体験や感情を学習した中身に照らし合わせて共感を探る作業を、私たちは「重ねる」と言う。子どもたちは、自らの保護者に重ね、また友達とも重ねていく。そうした行為がさらに共感をひろげ、感動を呼び起こしていくのである。

3点目は、子どもたちの自己表現を大切にすることである。体験を通じて生み出される感動や共感を、自分の言葉で表現するコミュニケーション力を高めるために教科学習とも連携しながら、様々な取組みをしてきている。

タウン・ワークスでは、多様な体験活動を通じて、単に知識を得るだけでなく、自分に置き換えて考える想像力や、行動力・技能(スキル)を育てることを課題に、取組みを進めている。また、フィールドワーク等の引率から始まった保護者の参加は、取組み前の「タウン・ワークス保護者説明会」などのアカウンタビリティにより、「親の会」(1)の運営や、親子集会(2)の内容、子どもへの評価など、企画段階からの保護者の参画に発展してきた。評価活動では、ポートフォリオ評価など、子ども自身の「自己評価」を大切にした評価をすすめ、「自分」だけでなく、「友達」「先生」「保護者」「地域」と、関わるすべての人から評価されることで、自分自身の成長・良さに気づき、自尊感情を高めていくことを大切にしている。

本校でも、自分に自信が持てないあまり、素直に感情を表現できない子や、人とのつながりを上手にもてない子どもが増えている。そんな子どもたちが「かけがえのない自分」であることに気づき、確かな自尊感情を身につけ、自信を持って他者との人間関係を広げていくことができるように、コミュニケーションスキルを採り入れた、新しい総合的な学習のカリキュラム化を進めている。

3 “ぬのしょう、タウン・ワークス"のカリキュラム

 3年生から6年生までのタウン・ワークスのカリキュラムは次の通りである。

4 4年生における具体的実践

(1) 4年「仕事」(1学期)

<1> テーマ 「わくわくワークI」一仕事の学習一

<2> ねらい

<3> 取組みの流れ

<4> 学習内容について

4年生の仕事の学習は、前思春期に入った子どもたちが、仕事を通じて保護者と向き合い、その頑張りや誇りに触れ、自分自身を見つめる学習である。

 1学期は、地域のなかの様々な仕事場、そこで働く人に出会う。

 2004年度は2日間で33軒の仕事場を回った。学習の導入部分は、仕事ブレーンストーミングだ。「仕事」と聞いて頭に思い浮かぶことを出し合う。この時点で子どもたちから出てくるのは、保護者の仕事や自分が生活していく上で目に見えるもの、例えば、スーパーマーケットや本屋、散髪屋等であり、非常に限られた範囲の仕事場でしかない。だから、校区にどんな仕事場があるのかをしっかり認識させるために、校区仕事場マップづくりに取り組む。

 校区仕事場マップづくりとは、校区をブロックごとに分けて、どんな仕事場があるか調べて地図に書きこんでいくことである。子どもたちは、いつも通っている道に、実は様々な仕事場があることを知り、どんな仕事をしているのか知りたいと思うようになる。

 そこで、グループごとに見学をしたい仕事場を選び、自分たちで見学をさせてもらえるように頼みに行く。その前に、大人と話すときにはどのように話したらよいのかを考える時間をとる。まず、教員が大人と子どもの会話のロールプレイを行い、子どもたちがそれを見て感じたことを交流し、正しい話し方を気付きのなかから学習する。また、良い聞き方と悪い聞き方のロールプレイを子どもたち全員が体験し、どのように聞くことが良いのかを実感する。

 こうして、コミュニケーションスキルの学習をした上で、見学を頼みに行く。学校に帰ってきた子どもたちは、興奮気味に、「いいよと言ってくれた!」とか、「すごくいい人だった」とかうれしそうに話してくれた。

 見学に行く前に、いろんな仕事をしている人の写真を見て気付きを出し合うフォトランゲージを行った。どのような仕事をしている人かを出し合わせて、子どもたちに様々な質問を投げかけた。「なぜこの人は笑顔なのだろう?」「この人たちはなぜ堂々としているのだろう?」等々。子どもたちは、「この仕事が好きなのではないか」とか「自分の仕事に誇りを持っているんだ」とか、仕事の内容はもとより、働く人に視点を持っていき出した。

 さらに、2回目の見学に行く前に交流会を持ち、1回目の見学の感想を発表しあった。そのなかで、「おっちゃんが汗を流しながら一生懸命仕事をしていた」とか「やってみるかと言われて鉄板に穴をあけさせてもらったんだけど、すごく力が要った」とかいう意見が出てきた。このような交流を通して、子どもたちは、「楽しかった」「面白かった」という感想から、働く人の姿に目を向けて、なぜ仕事を続けているのか、なぜ頑張れるのか、そして、仕事のきびしさや喜びなどについて見たり聞いたりしてくるようになってきた。

 見学の引率は、延べ40名ほどの保護者にお願いした。そして、学校に帰ってきたグループから、保護者に感想を述べ、保護者からも感想をもらった。

 子どもたちは、実際に仕事をしている姿を見たり、仕事場で働く人から話を聞いたりして、どんな仕事も大変なんだという感想を持った。この気持ちが2学期の保護者からの聞き取りにつながる。

 学習のまとめである「語る会」では、「食堂の仕事は一時にたくさんのご飯を作るから本当に大変なんだと思った。でも、お客さんに『おいしかった』といわれたらもっと頑張ろうと思うんだそうだ。そんなおっちゃんがすごいと思った」というように、働く人に焦点を当てた意見がたくさん出た。また、「お母さんも、いつも腰いたいとい言ってるけど、ずっと立ちっぱなしだから大変だと思う」というふうに自分の保護者と重ねた意見も出てきた。

 最後に、親子集会でポスターセッションをして、学習したことを保護者に報告した。模造紙いっぱいに書いた仕事の厳しさや喜びを生き生きと報告している姿が印象的だった。

今回の学習では、校区を身近に感じ、校区の人たちとのあいさつが増え、なかには、お世話になった店に家族で夕飯を食べに行く姿も見られた。また、子どもたちのなかで「仕事」という概念が広がり、自分の保護者はどんな仕事をして、どんな厳しさや喜びがあるのか知りたいという興味・関心を持って終わることができた。

 (2) 4年「仕事」(2学期)

<1> テーマ 「わくわくワークII」−仕事の学習−

<2> ねらい

<3> 取組みの流れ

<4> 学習内容について

2学期は保護者からの聞き取りを中心に行う。4年生の子どもたちは、保護者の仕事を知らない子どもたちが多い。また、仕事の名称は知っていても、そこで何をしているのかは知らない子どもがほとんどだ。

 まず、「導入」として仕事場体験を行う。1学期は見学が中心だったが、2学期は、実際に働く体験をさせてもらう。銭湯の風呂を洗ったり、店の掃除をさせてもらったり、自動販売機の缶ジュースを補充させてもらったり、花屋で花束を作らせてもらったりする。1時間程度の体験だが、子どもたちはそこで様々な学習をする。「毎日こんなに掃除をしていたら、ものすごくしんどい」「自動販売機にジュースを入れるのは、簡単そうに思っていたけれど、ジュースの箱は重いし、背伸びをしたり、しゃがみこんだりと腰が痛くなった」「花屋さんは、きれいな仕事だと思っていたけれど、葉っぱを落とすとき、手で落とすので手が切り傷だらけになって痛かった」等々、体験しなければわからないことをたくさんつかんできた。そして、仕事って思ったより大変なんだ、ということを実感した。

 仕事の大変さを実感した子どもたちは、仕事の聞き取りをするとき、ものすごく集中して聞いていた。そして、ゲストティーチャーから「みんなのお家の方も一生懸命仕事をしているんだよ。それに、君たちのことをすごく大切にしているんだよ」と言われたとき、思わず聞きたいと思ったのである。

 その気持ちで保護者からの聞き取りを行う。実行委員が中心になり、アンケートの内容を検討し、子どもたちが各家庭で聞き取りを行う。仕事の内容を聞き、仕事の厳しさ、仕事の喜びを聞く。そのなかで子どもたちは保護者の頑張りを知る。そして、その頑張っている保護者から子どもへの思いや願いを聞くのである。子どもたちは、素直に保護者の思いを受け止め、自分の保護者の頑張りを感じ、自分も何か手伝えることはないかと考えたり、自分が学校で頑張ることが保護者の頑張りにつながっていくことを知る。

 さらに、この聞き取りで感じたことを学級の仲間に伝えることで、自分の保護者に誇りを持ち、自分自身に自信を持つようになってくるのである。

 その作業を布忍小学校では「展開」という。ここでの「展開」とは、ある子どもの保護者の労働についてくわしく学習して、仕事の厳しさやそのなかでの頑張り、そして、子どもに対する思いをつかむことである。このことを通して、子どもたち全員が自分自身の保護者の姿をくわしくとらえるのである。

 また、布忍小学校校区の家庭は、ほとんどが共働きである。子どもたちは大なり小なり家で子どもだけでさびしい気持ちを持っている。しかし、そんなさびしい気持ちを持っているのは自分だけだと思っている子が多い。この学習でそんなさびしい気持ちも交流する。子どもたちは共感的にその気持ちを受け止め、「自分だけではないんだ」という安心感を持ち、さらにつながりを深めていくのである。

 学習の後半では、10数名の保護者に来ていただき、グループ別の聞き取りを行った。友達の保護者から直接仕事のことや子どもへの思いを聞くのである。話す方もやさしく語りかけ、聞く方もにこやかに聞いて、終始和やかな雰囲気で進んだ。そして、「それは僕と似ている」とか「私も同じ気持ちがある」とか、「私のお母さんも、家帰ったらしんどいと言ってるわ」とか自分のことや自分の保護者と重ねながら聞いて、仲間に感想を返していた。

 学習の最後は、1学期同様、親子集会で締めくくる。親子の小グループで、学習でつかんだことを発表する。そして最後に全体で、代表の子どもが保護者への手紙を読む。「いつも疲れて帰ってきているのに、ご飯の用意とかしてくれてありがとう」。

年間を通して、保護者の協力なしにはできない取組みである。この学習を通して、改めて、保護者が学習に参画することの大切さを実感した。子どもからの手紙の後、保護者からのメッセージカードが、一人ひとりの子どもに渡された。子どもたちは、うれしそうに自分へのメッセージを読んでいた。この学習で、保護者との関係がより近いものになり、そして、学校と保護者とで子どもの学びに関われたことが何よりの宝となった。

5 6年生における具体的実践

(1) 6年「進路」

<1> テーマ 「進路夢体験」−トライ・トゥ・ザ・フューチャー−(進路学習)

<2> ねらい

<3> 取組みの流れ

(2) 学習の中で大切にした観点

6年生の子どもは、体も心も目を見張る成長があり、自分の身の周りだけでなく、自分の将来や、社会にも関心が向き始める。また、新たな中学校生活にも期待や関心を寄せている一方で、不安や葛藤も持っている。

 このような時期だからこそ、この学習を通して、さまざまな人に出会い、多様な職業や生き方にふれることで、自分の将来に対して夢を持ち、これからの自分の生き方をみつめるようになってほしい。

 小学校で「夢・進路」を考えていくことの難しさや、中学校における「職業体験学習」との差違を指摘されることがある。冒頭にも述べたとおり、本校には厳しい生活背景から、「夢」を持つことや「夢」に思いをはせることが困難な子どもが多い。“ぬのしょう、タウン・ワークス”を通じ、自分の生き方を考えていくそのプロセスのなかで、子どもたちはたくさんの人と出会う。すばらしい生き方にふれ、子どもたちは身近な「生き方のモデル」を見いだす。「こんな生き方ってすごいな」「こんな人になりたいな」そういう思いを持って、自分の将来を、夢を考えていくことこそが、この6年の取組み「進路・夢体験」の大切なポイントである。取組みを通じて具体的な夢を見つけていくことがねらいではない。小学校の最高学年において、子どもたち自身が「夢って広がっていくもんなんや」と、「夢って、探していくものなんや」と、実感することが大切である。

 一方で、フィールドワークや聞き取りなど、子どもたちが主体的に取り組む活動を大切にし、一人ひとりが自分の目的を持った学習になるようにしている。

これまで出会った人々から学んださまざまな生き方から、自分のこれからを見つめるという意味では、生き方学習のまとめとしての進路学習といえる。

  (3) 学習内容について

布忍小学校の「トライ・トゥ・ザ・フューチャー(進路学習)」は1年を通して行われる。1学期に、これまでの生活や人権総合学習のなかでつかんだことをまとめ、自分の生き方を見つめていく作業を、「ヒロシマ修学旅行」の取組みのなかに位置づけて行っている。子どもたちは広島に行き、生き方をかけて語り継いでくださるヒバクシャの方々に出会うなかで、平和の大切さ、仲間の大切さを教えてもらい、それぞれが自分の生き方を見つめていく。

 そして2学期、本格的な「トライ・トゥ・ザ・フューチャー(進路学習)」がスタートする。2004年度の取組みでも、学習の前のアンケートでは、学年全体の傾向として将来の夢について明るい展望を持っている子どもは少なく、将来の夢についてあまり意識していない子が多くいた。今回の学習では、そんな子どもたちが夢に向かって突き進んでいる人と出会い、もう一度自分と向き合って将来の夢や生き方について考えることができればと思った。そして、将来の夢や生き方を仲間と伝え合い理解し合うなかで、さらに自信を持つことができる学習にしていくことを目標にした。

 導入の聞き取りでは、環境教育プランナーとして活躍している人の話を学年全体で聞かせていただいた。そこには、一度、地域の子ども会組織の活動で出会ったこともあり、自分から司会の役を引き受け、学年全体の前に出て活躍する地域子ども会に在籍するAの姿があった。

 Aは1日目のフィールドワークで弁護士に出会うコースを自分で選び、5人の仲間と1人の保護者に付き添ってもらって、電車に乗ってその弁護士に会いに行った。そこで過労死事件の弁護について聞かせていただいた。大切な家族を仕事で奪われた遺族の思いをどう支えていくかという話を聞き、Aらは家族の大切さを改めて考えていた。

 2日目のフィールドワークでは、天王寺動物園の職員に会いに行った。その人からは、本当に動物とわかり合うための体をはって行ってきた飼育の話や命の尊さを熱く語っていただき、努力することの大切さを学んでいた。

 3日目、Aは自分が習っている空手道場を訪問した。尊敬する空手の先生の前で、恥ずかしそうにしながらも、好きな空手を体いっぱいに表現し、果敢に挑戦している姿を見せていた。

 こうした、色々な人との出会いを通して、Aは努力すること、自分から前へ一歩踏み出していくことを学んでいた。まとめの語る会では、「今までの自分は、すぐに無理と言っていた。そうではなくて、自分から努力していかなければならないことが分かった」と仲間に伝えるAの姿があった。

 3学期に入り、いよいよ中学進学が目前に迫ってくる。学年全体でも、「中学進学に向けて、一人ひとりが自信を持てるようにしよう。そのために、今の仲間との信頼関係をもっと強めていこう」ということを課題に取り組んだ。今回の学習は、Aだけでなく多くの子どもにとって、今の自分の課題を見つめ将来の夢や生き方を考えるきっかけになった。その一方で、学習の目標を持ち切れず、自分の将来の夢や生き方につなげられずにいる子どもたちもいる。次年度の課題として、一人ひとりが目標を持って学習に取り組むための工夫を考えていきたい。

 6 まとめ

 “ぬのしょう、タウン・ワークス”は、地域と向き合い、保護者と向き合い、仲間と向き合い、自分自身と向き合うなかで、「かけがえのない自分」を探し、「自分で判断できる力、行動できる力」を身につけ、「自らの生き方を模索」していくなかから、「自尊感情の育成」をめざす「生き方学習」である。

 6年生の「進路・夢アンケート」では、ほぼ9割の子どもが、「人と関わる仕事」「人のためになる仕事」をしたいと答えている。これは、小学校6年間のタウン・ワークスでの成果と考えている。

 布忍小学校では、保護者・地域を含めた協働の取組みとしてのタウン・ワークスの充実を図ってきた。今後、新たな展開として、ネットワークをキーワードに地域のコミュニティづくりと幼稚園・小学校・中学校の「人権学習11年間のデザイン化」が求められている。さらに、子どもたちに「自分で自分のことを評価できる力」を育てるために、学校と地域・保護者の双方向の連携による評価とアカウンタビリティのより一層の充実を進めなければならないと考えている。

(1)  タウン・ワークスを保護者と共に取り組むために、子どもの様子の交流や、保護者としてどう取組みに参画していくかを話し合う場

(2)  学習のまとめとして学習でつかんだことを保護者に発表する場