今回、告発した差別サイトは、その前身ともいえる愛知県内の部落の一部をとりあげた差別サイトが昨年12月、名古屋法務局に削除され、それが今年1月、より悪質化して再開し、再度削除されるという経緯をたどってきた。2月の削除後も、ネット上には、犯人と同じハンドル(ネット上で使う別名)での同サイトの再開予告の書き込みが発見されている。犯人の特定と、差別を禁止する法整備、とくにインターネットの規制は一刻を争う緊急の課題だ。
インターネットという媒体は、その特性上、流された差別情報の完全回収は困難きわまりない。同サイトには1万5000をこえるアクセスがあったことが確認されているが、削除後も一部のコピーがネット上で発見された現実がある。また、高額で売買された従来の「部落地名総鑑」と異なり、同サイトは無料公開。携帯電話やパソコンで瞬時に見られ、アクセス件数は「部落地名総鑑」購入企業数に比べても桁違いに多い。しかし、差別情報は従来と同じく被害者に隠れて伝達されており、具体的な差別事件が同サイトを元に発生したことを突き止めることは、きわめて困難だ。
告発後の記者会見で、吉田委員長は、「部落差別を前提にしたもの。かつてない重い事件、看過できない。間違いをおかした人に訴えて話し合うのが本来の運動の姿だが、犯人が捕まらず、話し合いもできないということで告発に出た」と報告。とくに、厳しい差別のなかで多くの人たちが解放運動に立ちあがれず、部落出身を隠して差別にじっと息を殺している現実を強調した。A社の経営者の甥がかつて受けた結婚差別も紹介し、差別を禁止した「人種差別撤廃条約」の完全批准も訴えた。
山崎書記次長も、愛知県内の建て売り住宅の広告にある差別記載の事例や、部落外で育って自分が部落出身と認識していなかった30歳代の人が、結婚相手との会話のなかで部落に親戚があるという話が出て部落出身を調べられた。そして、結婚式の1週間前に破談になり、職場も辞めざるをえなくなったごく最近の結婚差別事件を紹介し、部落差別の厳しさと、部落の詳しい所在地を掲載している同サイトの悪質さを強調した。
|