本書で紹介した記事は、基本的には2002年1月から2003年3月までの間に生起もしくは発覚した差別事件、あるいはこれ以前に発覚し、この間に糾弾会などで集約を確認した差別事件を拾い上げ、その中から比較的事実関係が明確で、典型的な事件を選んで編集・紹介している。
対象とした資料は、『解放新聞』中央版や各都府県版、各地研究集会資料や学習会資料、その他各都府県連が集約した資料、全国の新聞などから収録した。
編集にあたっては、可能な限り資料収集に努めたが、都道府県別索引をみていただければわかるように、都道府県によって紹介した件数に差がある。そしてこれらの数字がすべてではなく、とくに都府県連段階で集約しきれていない支部・地協レベルでの未確認情報が多数あるように思う。ついてはそういった細かな情報等があれば是非ともお知らせいただければ幸いである。
また、これら収集した差別事件について、<1>差別投書・落書き・電話、<2>インターネットによる差別事件、<3>地域社会での差別事件、<4>差別身元調査事件、<5>公務員による差別事件、<6>結婚差別事件、<7>教育現場における差別事件、<8>マスコミ・出版界における差別事件、の8項目に分類している。但し、複数の項目にまたがると思われる差別事件については、これまでと同様に、より適切と思われる項目に編集部で分類した。
さて、2003年は国連総会において世界人権宣言が採択されて55年目という節目の年にあたる。宣言は、差別の撤廃と人権確立が平和の基礎であるとしているが、今日の国際情勢をみたとき、差別撤廃と人権確立は自然に実現されるものではなく、すべての人々が力を合わせ日常不断に努力していかなければならないことを改めて示している。
日本国内においては、昨年3月、同和対策に係る「特別措置法」が終了したものの、このことは部落差別が解消したことを意味していない。本書の中でもみられるように部落差別は依然として存在している。この問題の解決には、相談活動を充実させていくとともに、一般施策の活用・改革・創造を中心にした一層の取り組みが求められているのである。
本書で紹介している差別事件は、氷山のほんの一角にしかすぎないが、少しでも差別の現実を知る手がかりとなり、また差別撤廃へむけた取り組みの基礎資料として役立てば幸いである。
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