本書で紹介した記事は、基本的には2001年1月から12月までの間に生起もしくは発覚した差別事件、あるいはこれ以前に発覚し、この間に糾弾会などで集約を確認した差別事件を拾い上げ、その中から比較的事実関係が明確で、典型的な事件を選んで編集・紹介している。
対象とした資料は、『解放新聞』中央版や各都府県版、各地研究集会資料や学習会資料、その他各都府県連が集約した資料、全国の新聞などから収録した。
編集にあたっては、可能な限り資料収集に努めたが、十分に収集しきれたとは言い難いのが率直なところである。都道府県別索引をみていただければわかるように、都道府県によって紹介した件数に差があるが、こられの数字がすべてでないことはお断りしておきたい。とくに都府県連段階で集約しきれていない支部・地協レベルでの情報については気がついていないものが多数あるように思う。ついてはそういった細かな情報等があれば是非ともお知らせいただければ幸いである。
また、これら収集した差別事件について、昨年版(2001年版)と同様、@差別投書・落書き・電話、Aインターネットによる差別事件、B地域社会での差別事件、C差別身元調査事件、D就職差別事件、E企業・職場での差別事件、F公務員による差別事件、G結婚差別事件、H教育現場における差別事件、I宗教界での差別事件、Jマスコミ・出版界における差別事件、の11項目に分類している。
但し、複数の項目にまたがると思われる差別事件については、これも昨年版同様、より適切と思われる項目に編集部で分類した。
「人権の21世紀」の幕開けとなった2001年を国連は「反人種主義・差別撤廃国際年」と提唱し、8月下旬から9月上旬にかけて南アフリカのダーバンにおいて国連主催の「反人種主義・差別撤廃世界会議」を開催した。ここで、日本の部落問題やインドのダリットに代表される「職業と世系(門地)に基づく差別」が大きなテーマの1つとして取り上げられ、また世界中に存在する広範な人権問題が取り上げられたこととあわせて極めて重要な意味を持っていた。そして、長期間におよぶ不当な抑圧と深刻な貧困が今日なお世界中に存在しており、差別問題の解決にむけて国際社会への関心を呼びかけたが、多くの犠牲者を出した9月11日の米国での「同時多発テロ」という悲劇も記憶に新しいところである。
一方、日本においても、不況の長期化にともない、民族排外主義や国権主義を強化する傾向が強まってきており、そのような状況とあいまって差別事件があとを絶たないという厳しい現実がある。
本書で紹介している差別事件は、氷山のほんの1角にしかすぎないが、少しでも差別の現実を知る手がかりとなり、また差別撤廃へむけた取り組みの基礎資料として役立てば幸いである。
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