大阪府では橋下知事誕生後、府財政の健全化の名目のもと人権行政の行く末も不透明になりつつある折りも折り、人権行政のあり方について本質的に論じる本特集は、大阪の動向が全国に及ぼす影響を考えても、非常に時宜にかなった企画になったと考えている。
巻頭の稲積論文は、差別問題に関わるさまざまな事件や事例に学び、真の意味で主体性をもった人権行政を柔軟に推進するための問題提起である。中川論文は、分権化のもと、自治体の独自最高規範である自治基本条例の制定過程およびその内容に、人権の視点をいかに組み入れるべきかを考察する。友永論文では、自治体の人権施策を提起したものとして最新のものの1つである大阪市人権施策推進審議会答申、さらにこれまでの国内外の取り組みの概括から、人権行政の骨格、課題について整理する。さらに奥田論文は、人権行政の推進にとっては不可欠の実態把握調査の一環であるべき人権意識調査の現状について、自治体の消極的な姿勢にも関わる問題点と課題を実証的に明らかにする。
個別論文では、福岡県田川市での教育改革を継続して追う高田さんが、学力の階層間格差の縮小を下支えする意味をもつ金川小学校と同校区の生活リズム向上の取り組みとその成果を紹介する。(K)